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安野光雅「読書画録」(講談社文庫) 仕事から帰ってきたチッチキ夫人がうれしそうにカバンから1冊の文庫本を取り出して言いました。
「ねえ、これ100円よ。いいと思わない?」 チッチキ夫人は 「100円棚の救い主」 を自負しています。まあ、本屋稼業を続けてきたこともあるからでしょうね。新刊本で、売れますようにとホコリをはたいたりした本には、とりわけ情が移るようです。 「まあ、あなた、こんな日盛りに並べられて、これじゃあ、あんまりね。」 というわけでしょうか。で、本日、つれかえってきたのは安野光雅「読書画録」(講談社文庫)でした。1989年の新刊ですが、1998年の3刷の本でした。 表紙の絵は、京都の三条、昔「丸善」という洋書屋さんがあったあたりです。内容は安野光雅の読書の思い出エッセイとスケッチです。 とりあえず実物をお読みいただくのがよろしいのではないでしょうか。かつては、高校の教科書の定番、梶井基次郎の「檸檬」です。 梶井基次郎「檸檬」 いかがでしょうか。この文章に、表紙のスケッチがついています。「読書画録」というわけです。 数えてみると、36の作品が取り上げられて、それぞれにスケッチがついていました。樋口一葉は『たけくらべ』で、旧吉原の大門跡、福沢諭吉は「福翁自伝」、三田のレンガ造りの校舎、正岡子規の「歌よみに与ふる書」は上野、根岸あたりです。 巻末には、取り上げた作品と作家の解説、森まゆみさん、あの頃の、森さんがボクは好きですが、その森さんとの対談も付いています。「檸檬」は京都でしたが、谷崎潤一郎の「春琴抄」の思い出では、大阪の道修町です。ザンネンながら神戸のスケッチはありません。 安野光雅が2020年に亡くなって3年経ちました。1980年代でしたか、絵本とか猛烈に流行りましたね。超流行画家だったのですが、お仕事に、なんとなく学校の先生の、細やかな気遣いが感じられて好きでした。 100円で並んでいた文庫なのですが、贅沢な本でしたね。なかなかお得でした。「救い主」のお手柄でしたね(笑)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.09.27 21:41:25
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