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カテゴリ:映画「シネリーブル神戸」でお昼寝
セバスティアン・マイゼ「大いなる自由」 「希望の灯り」という、数年前に見たドイツの映画で主役をしていたフランツ・ロゴフスキという俳優が主役らしいというので、見に来ました。
セバスティアン・マイゼという監督の「大いなる自由」という作品です。見終えて、ボンヤリ振り返っていて、最初から最後まで、画面上に女性が一人も出てこなかったんじゃあなかったかということに気づいて唖然としました。 映画の舞台は1945年、1957年、1969年の西ドイツの刑務所でした。 1945年、ドイツ第三帝国の崩壊直後、解放軍であった連合国によって管理されていた刑務所で、偶然、同房になったハンスとマッチョの権化のようなヴィクトールの出会いです。 「オレに触るな!変態!」 象徴的なセリフで映画が動き始めました。 どうなるんだろう、この二人? 山積みされたナチスの軍服から鍵十字のワッペンを剥ぎ取り、黙々と仕立て直しの作業に従事する主人公ハンスが映ります。 で、ヴィクトールが、毛嫌いしていたはずのハンスの腕に彫られた収容番号の入れ墨に気づくところから、一気に輪郭が見え始めました。 ハンスの腕をつかんだヴィクトールがいいました。 「消してやろうか?」 隠し持った刺青の道具で番号が消されていきます。 第三帝国のドイツで「同性愛者」が「反社会分子」とみなされて、ユダヤ人、共産主義者、精神病者などとともに強制収容所への「収容」の対象であったことはボクでも知っていますが、戦後の東西ドイツに男性同性愛を禁じる刑法175条という法律があったことは知りませんでした。刑務所ではナチス時代に刑務官だった人間たちが戦後も同じ職業に在職し、いかにも官僚的な無表情で情け容赦のない暴力をふるっています。 1957年、二人が出会った日から10年以上たった、同じ刑務所です。再び収監されたハンスと、服役を続けているヴィクトールの再会です。 ヴィクトールに恩赦のチャンスが巡ってきますが、出所直前のある日、不安に駆られたヴィクトールは隠し持っていたヘロインを自ら注射して気を失い、恩赦を逃します。再び同房になった二人ですが、今度はハンスが薬物依存のヴィクトールを献身的に看病し、東ドイツへの逃亡をささやきます。 「どこにも逃げていくことはできない!」 ヴィクトールは、そう叫びながら、戦地から帰った家で、知らない男と寝ていた妻を発見し、男と妻を殺した経緯を語ります。話を聞き終えたハンスはヴィクトールを抱きしめます。 実は、この年、東ドイツでは175条が失効していたのを見終えた後で知りました。 1969年、刑務所の娯楽室で月面着陸のテレビ放送をみているハンスとヴィクトールをはじめとした囚人たちのシーンが映ります。ハンスは娯楽室のテーブルに刑法175条の失効を大見出しにした週刊誌を発見します。1940年、ナチス時代の収容所収監に始まって以来、繰り返し罰され続けてきたハンスの「罪」が無くなったのです。 ハンスの二の腕には、収容番号の入れ墨を消すためにヴィクトールが彫ってくれた、まあ、ボクには意味の分からない大きな青黒い刺青が見えます。 「たばこの差し入れをよろしく頼むよ。」 ヴィクトールからの三度目の別れの言葉に送られて出所するハンスに行くところはあるのでしょうか。 たった今、ガラスをぶち割ったショー・ウィンドウの薄明かりに照らされて真夜中の路上に座り込んでいる暗い影でしかないハンスが映っています。世界の真相のただ中で哀しく座り込んでいる人間の姿です。 その姿を見ながら思い浮かんできたのは、長い同房生活で、一度だけ愛の行為に及ぶハンスとヴィクトールですが、翌朝、中庭での散歩の時間のシーンです。 「俺は、ホントは違うんだ。」ヴィクトールが恥ずかしそうに言葉をかけ、ハンスが一言答えて、二人は抱き合います。チラシの抱擁のシーンです。 ハンス・ホフマンを演じたフランツ・ロゴフスキ、刑務所で老いていくマッチョのヴィクトールを演じたゲオルク・フリードリヒ、二人ともいい俳優ですね。拍手! タバコに火をつけるシーンが、実に印象に残る哀しい作品でした。拍手! 監督 セバスティアン・マイゼ 脚本 トーマス・ライダー セバスティアン・マイゼ 撮影 クリステル・フォルニエ 美術 ミヒャエル・ランデル 衣装 ターニャ・ハウスナー アンドレア・ヘルツル 編集 ジョアナ・スクリンツィ 音楽 ニルス・ペッター・モルベル ペーター・ブロッツマン キャスト フランツ・ロゴフスキ(ハンス・ホフマン) ゲオルク・フリードリヒ(ヴィクトール) アントン・フォン・ルケ(レオ) トーマス・プレン(オスカー) 2021年・116分・R15+・オーストリア・ドイツ合作 原題「Great Freedom」 2023・07・07・no85・シネ・リーブル神戸no199 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.07.30 14:46:34
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