鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく 4 」(文藝春秋社)
2023年7月のマンガ便です。鈴ノ木ユウ「竜馬がゆく4」(文藝春秋社)です。第31話から始まります。
時は1954年、嘉永6年です。所は伊豆半島の東、三浦半島の長州藩が海防基地の海岸あたりです。僧なんです、ペリーがやってきているんです。で、長州藩の陣地を偵察していた北辰一刀流の剣豪坂本龍馬と、長州藩士で神道無念流の達人桂小五郎の一騎打ちで開巻です。
というわけで、表紙の人物は桂小五郎君です。吉田松陰門下の俊才の一人です。維新の有名人の中では、珍しく、1877年、明治10年、43歳くらいまで生き延びて、維新の三傑とかいわれた人です。ちなみに、三傑の残りの二人は西郷隆盛と大久保利通です。
この第4巻33話は吉田松陰の「下田渡海」、伊豆半島の下田港沖に停泊中のペリーの船に、金子重助という、弟子だった足軽の青年と二人で乗りつけてアメリカに連れて行ってもらおうと談判した有名な事件があるのですが、そこが描かれていて感無量でした。
あのー、実は、シマクマ君は40年前の卒業レポートで(まあ、卒論ともいいますが)、吉田松陰の詩と真実とでもいいますか、そのあたりをあれこれ調べたことがあるのです。だから、まあ、やたらなつかしいわけですね。
で、桂小五郎ですが、彼は松下村塾ではなくて、藩校の明倫館で、天才少年と言われた松陰、吉田寅次郎から山鹿流の兵学講義を受けた人で、歳は松陰の三つ年下に過ぎません。ただ、残された肖像画の松陰がえらくオジサンに描かれていて、誤解されるのですが、松陰という人は1859年、安政6年に処刑さた時、29歳なんですね。ついでに言えば、このマンガの主人公坂本龍馬も30歳くらいで亡くなっていますし、高杉晋作は27歳で病死、先ほどの金子重助は25歳で獄死です。
70歳になろうかという、馬齢を重ねている目から見ると、異様な若さですね。で、1954年が舞台の本巻では、まあ、20歳そこそこの龍馬とか小五郎とか、松陰が、
今、まさに幕末の志士へと変貌せん!
とする、その時が描かれていて、なかなか、感無量ですね。
「同じ国の藩同士がそれを隠したり隠されたりするようでは日本はもう守れんよ」「……」
「面白い」
「坂本くん・・・・キミに長州陣地の全てを教える」
31話の最後のページです。小五郎が龍馬を知ったシーンです。まあ、事実か創作かはわかりませんが、司馬遼太郎らしい演出です(笑)。
なにはともあれ、幕末の始まりですね。ここから、いよいよ面白くなるはずですが、この時、「日本」を揺るがしたのはペリーだけではありませんでした。
もう一つの大事件が繰り返し「日本」を襲います。
本巻36話に描かれた「安政東海地震」(1954・M8.4)、この巻ではまだ触れられていませんが「安政江戸地震」(1955・M6.9)という、二つの巨大地震ですね。
「安政東海地震」は、所謂、南海トラフ型、「安政江戸地震」は直下型で、地震としてのタイプは違いますが、後者が大都市江戸を直撃したことが、決定的だったわけです。まあ、そのあたりは次巻以降の話題でしょうね。楽しみです。
というわけで、鈴ノ木版「竜馬がゆく」快調です。面白いですよ(笑)。