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カテゴリ:読書案内「旅行・冒険」
角幡唯介「裸の大地第二部 犬橇事始」(集英社) 毎日、
暑い! そういう時には、零下30度の氷の世界を行く犬橇の話なんぞがピッタリ!だと読み始めたら 熱い! 話でした(笑)。 角幡唯介という人の文章を読むのは初めてです。読んだのは「裸の大地 第二部 犬橇事始」(集英社)、市民図書館の新刊の棚で出合いました。 ハマりました!350ページにわたる、かなり分厚い、まあ、冒険日記です。第1部、第2部とあるシリーズの第2部です。 オレンジ色の街灯がともる冷え冷えとした暗がりのなか、私はよたよたと五頭の犬のところへむかった。 シオラパルクというのは、グリーンランドの最北、だから、まあ、たぶん、地球で一番北にある町(?)のようです。角幡唯介という人は、ボクが知らなかっただけで、かなり有名は探検家らしいのですが、この町を起点にして、一匹の犬とともに、自分で橇を引いて極地を歩く、歩くといっても1キロ、2キロではなく1000キロに及ぶ行程を歩いて踏破するという冒険にチャレンジしていた人らしいですが、その彼が、今度は犬橇で、 もっと遠くまで! と考えて新たなチャレンジを始めたドキュメンタリー日記でした。 冒険日記の主役は、最終的には13頭になった犬です。本書の巻頭にはその13頭の犬の写真が掲げられています。 ウヤミリック、彼が最初に出合った相棒です。ウンマ、角幡犬橇チームの最初の先導犬です。そして、ボス争いの主役の一頭、いかついウヤガン。 キッヒ、チューヤン、ポーロ、プールギ、ナノック、ダンシャク。語り始めるときりがない個性的な面々です。 キンニク、カヨ、カルガリ。カコットは一頭だけいる雌犬です。カルガリは最後に加わった一頭。カヨは女性ではなくて茶色という名前です。 犬橇事始、始まりはこんな感じです。 それぞれ、所謂、エスキモー犬ですが、写真を見ていて、同じ犬種かどうかなんて、ボクにはわかりません。しかし、読み進めるにしたがって、登場する犬たちについて、繰り返し、最初の写真で見直すうちに、一頭、一頭の犬の、実にユニークな個性にひきつけられていく1冊でした。 先導犬のウンマは「アイー(止まれ)」の指示だけは初日のうちにわかってくれたが、「ハゴ(左)」、「アッチョ(右)」という方向への指示はしばらく理解できないままだった。たとえば、村を出発して八キロほど離れた対岸に向かって一時間ほど直進するとする。対岸に近づいてきたところで方向を左に変えようと「ハゴ、ハゴ!」と鞭をふるが、犬はその指示が理解できないためそのまま直進を続ける。そうすると、やむなく私は橇を止めて、犬たちの前を歩き、左に導き、そして「デイマー」と出発させて橇に乗る。しかし、方向を変えても犬はまたグィーンと右に曲がって元の直線方向にもどってしまうのだ。 犬橇なんて、そのあたり(グリーンランドとか)に暮らす人たちには、誰にでもできるんじゃないかと、たかをくくって読み始めた、ド素人読者であるボクが、一気に引き付けられたシーンです。 2年にわたる苦闘の始まりです。目次をご覧いただくとお分かりになるかもしれませんが、角幡唯介の犬との出会いから、哀切極まりない別れまでが記されています。最後は、グリーンランドの果てまで猛威を振るうコロナとの戦いの記録でもありました。 しかし、この本の読みごたえを支えているのは、角幡唯介の独特の文章力と、おそらく、その底にある冒険哲学です。ボクは、当分この人を追いかけることになりそうですね(笑)。早速ですが、順番が逆になってしまった第1部に取り掛かっています。 〈目次〉 角幡唯介(かくはた ゆうすけ) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.09.27 21:31:00
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