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カテゴリ:映画 ドイツ・ポーランド他の監督
ヴィム・ヴェンダース「パリ、テキサス」その2 パルシネマ 2023年の9月にパルシネマで見ました。小津安二郎の「お早う」との2本立てで、SCC、シマクマシネマ倶楽部、第10回鑑賞作品として選んだのですが、2本立てなので11本目になります。映画はヴィム・ヴェンダース監督の「パリ、テキサス」です。
一緒に見たM氏は、まあ、やり取りは割愛しますが、これまた、今一で、納得がいかなかったようです。 で、ボクはどうだったか?通算すると三度目の鑑賞のような気がしますが、少なくとも、ここ一年で二度目の鑑賞でした。まだ、記憶が新しいですから、見ていて次のシーンが予想できます。その結果でしょうか、一つ一つのシーンの、新しい発見というか、気付きというか山盛りで、どんどんトリコになっていく感覚が自分の中に満ちてくる至福の映画体験でした。 上のチラシの写真のとおりで、赤い帽子をかぶって荒野を歩いている記憶喪失の男トラヴィス(ハリー・ディーン・スタントン)の前方には、町なんてどこにも見えなくて、アリゾナの禿山しかないこと。トラヴィスは無表情ですが意志的で、はっきり目的がわかっていること。しかし、なぜか、映画は線路を走る列車の音を映像の背後に響かせていること。 のぞき窓の部屋で「灯りを消せばこちらが見えるよ。」と語りかけたトラヴィスは、ジェーン(ナスターシャ・キンスキー)の視線に対して、暗がりで俯いていること。客がトラヴィスだと気づいたジェーンは、のぞき窓に背を向けて話を聞き、話をすること。 母ジェーンと息子のハンター(ハンター・カーソン)が感動的な再会を果たしたホテルの窓の下にしばらく佇むトラヴィスがいて、やがて、また、出発すること。 おそらく、行き先は「パリ、テキサス」で、そこはトラヴィスにとって母の生地であるとともに、トラヴィスと、ジェーン、ハンターの三人が家族だったころ購入した土地があること。 ボクには、この作品を30代のころに見た、なんとなくな記憶があります。昨年だったかの、この監督の特集で見直した時に「ベルリン・天使の詩」をはじめ、総敗北だったヴェンダースでしたが、やっとのことで、映画を構想するヴェンダースの場所までたどり着いたような気がしました。 テキサスにパリという地名を発見した時に、ヴェンダースに浮かんだのはなんだったのでしょうね。三度目を見終えて、ボンヤリと日々を暮らしながら、元町の高架ぞいの道を歩いていたある日、人が生きている限りそこを目指すほかない、しかし、ついにたどり着くことのできない荒涼とした夢の場所が思い浮かんできたのでした。そこにたどり着けば一息付けるんじゃないか。まあ、そういう場所ですね(笑)。 木偶の坊になりきって、あてのない旅人を演じ切ったハリー・ディーン・スタントンにはやっぱり拍手!でした。 いや、もちろん、そこに映っているのを見ているだけでため息が出てしまうナスターシャ・キンスキーの哀しくも美しい姿にも拍手!です。ボクにとっては生涯の記憶に残る傑作!ですね(笑)。 監督 ヴィム・ベンダー 脚本 サム・シェパード L・M・キット・カーソン 撮影 ロビー・ミュラー 美術 ケイト・アルトマン 衣装 ビルギッタ・ビョルゲ 編集 ペーター・プルツィゴッダ 音楽 ライ・クーダー キャスト ハリー・ディーン・スタントン(トラヴィス) ナスターシャ・キンスキー(ジェーン) ディーン・ストックウェル(ウォルト) オーロール・クレマン(アンヌ) ハンター・カーソン(ハンター) ベルンハルト・ビッキ医師ベルンハルト・ビッキ トム・ファレル叫ぶ男トム・ファレル ジョン・ルーリージョン・ルーリー 1984年・146分・G・西ドイツ・フランス合作 原題「Paris, Texas」 1985年9月7日(日本初公開) 2023・09・25・no119・パルシネマno65・SCCno11 ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.11.29 10:16:32
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