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司修「私小説・夢百話」(岩波書店) 司修という、一般には大江健三郎の作品のの装幀家と知られていますが、絵もお描きになるし、小説もお書きになる、まあ、マルチな方がいらっしゃいます。その方が
大江健三郎の魂に捧げる — 装幀者として という献辞を最初のページに記して、3月に大江が亡くなった2023年の6月に出版されたのがこの「私小説・夢百話」(岩波書店)という、「絵」と「掌編小説」をセットにした小説集です。 岩波書店の「図書」という、月刊のPR誌がありますが、その表紙の「絵」と、表紙裏の、まあ、本人がおっしゃるには「小文」がセットになっていて、2017年の1月から、2021年の12月まで、連載で掲載された、単純に5年ですから六十話ですが、その百に足りない分が、おそらく「書き」+「描き」おろされて、「夢百話」という体裁が出来上がっています。 わが家のように「図書」を毎号揃えているという、書店勤めの家族がいなければあり得ない暮らしの方は別として、よほどお好きな方が 「ああ、あれか!」と思い浮かべられるかもしれないという程度の、 あれ! の単行本化です。書き下ろされた分には、少し長いものもありますが、だいたい、見開き2ページで構成されている、いってしまえば大人の「絵本」です。 たとえば、これが第二章、138ページ~139ページ、絵の題が「空の怪物アグイー」です。 このままでは文章が読みにくいでしょうから、ちょっと写しておきます。 赤んぼうの脳は白紙ではない 先だって、死んだ母親の頭に妊娠していた彼女の胎児の脳を移植して、新しい人格が生まれるという、ギリシアのランティモスという監督の、まあ、へんてこな映画を見たのですが、その印象に誘われてこのページを引用しました。 こちらは、20世紀、ソビエト・ロシアのタルコフスキーという監督の「惑星ソラリス」という映画シーンから、大江健三郎が小説で描いたアグイー、そこから、おそらく武満徹を経由して中原中也の詩の世界へ、夢想が広がっていって、見てきた映画の世俗的結末の世界よりも、よほど、豊かなイメージの連鎖の世界で、短いながらも読みごたえがあると思いました。 まあ、全編、この調子の意表をついた展開で、ノンビリ手に取るのが楽しい本ですが、欠点は価格ですね。4400円です。絵もカラーですし、装幀もしっかりしていて、仕方のない価格なのですが、買うには根性がいりますね(笑)。 ボクは図書館の本で楽しんでいますが、そうなると、あんまりノンビリもできないんですね。まあ、諦めて笑うしかないですね(笑)。 目次と著者の紹介を載せておきます。 目次 司修[ツカサオサム] 追記 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.09.19 10:12:27
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