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カテゴリ:週刊マンガ便「コミック」
会田薫「梅鶯撩乱1~5」(講談社) 2024年4月のトラキチクンのマンガ便に第1巻から第5巻まで揃いで入っていたマンガです。第5巻の奥付を見ると2014年発行となっていますから、ちょうど10年前の作品です。
会田薫の「梅鶯撩乱 全5巻」(講談社)です。 「長州幕末狂騒曲」、ラプソディですね。登場人物というか、まあ、主人公は「奇兵隊」の創始者高杉晋作と、彼の後を継いで第三代総督になった赤根武人という人物でした。もっとも、マンガの時代が、薩長同盟前夜という時代ですから歴史活劇という面もありはするのですが、題名をご覧になれば、きっと ハテナ? とお思いになる通り、実はラブロマンス・マンガなのですね。 主人公の高杉晋作という人物は1839年生まれで、1867年(慶応3年)に27歳で亡くなった人です。死因は戦死とか刑死とかではなくて病死です。結核ですね。 で、 おもしろきこともなき世をおもしろく という川柳のような一句が辞世として有名ですが、高杉東行(とうぎょう)と号してたくさんの漢詩を残していることでも知られている人ですね。 で、「梅鶯撩乱」というマンガの題名を見ていてその詩のことが浮かんできました。いきなり白文では読めないでしょうから、とりあえず、書き下しです。ちなみに檐という字は「えん」とも「かく」とも読むようですが、軒先という意味です。 数日来鶯鳴檐前に鳴きて去らず 之に賦して与ふ ここ、数日、朝毎に軒先の梅の枝にやって来る鶯の声が詩情を喚起しての詩ですが、このマンガに「梅鶯撩乱」と題を付けた作者会田薫の頭に浮かんでいるのはこの詩のようです。 マンガは高杉晋作と遊女「此の糸」こと、「おうの」との出逢いで始まります。 ここに 、いかにも、今ふうの少年として描かれているのが晋作です。ここで出逢った二人、晋作はこの時「谷梅之助」を名乗ります。梅が晋作であり、鶯が遊女「此の糸」であるというロマンスですが、まあ、高杉晋作の生涯について少し知っていれば悲劇でしかないロマンスだということにすぐ気づいてしまう始まりですね。上の詩の最後の5行に、とても、その時代とは思えない率直な告白をおもわせる表現があって、驚きました。 而君容吾果何意 ちなみに、もうひとりの主人公赤根武人は、この日、同じ遊郭で、遊女琴乃と出会います。遊郭に売られてきた「おうの」をかわいがり、おうのも、また、ただ一人信じた姐さん遊女が琴乃でした。 第1巻が描いているのは文久3年(1863年)ですから、高杉にはあと数年の命しか残されていません。高杉、赤根がともに師とした吉田松陰が大獄で首を刎ねられたのが1959年ですから、それから4年、そして、物語はこれから4年です。 まあ、そういう時代です。そういう時代を生きた男たちをヒーローとして描くパターンはたくさんありますが、実は主人公として二人の遊女を描いているところがこの作品の面白いところですね。ボクは、登場人物の顔が見分けられないこういう絵柄は苦手なのですが、おもしろく読み終えました。 ちなみに、蛇足ですが、マンガ便を届けてくれるトラキチ君の名前は、実はシンサククンなのですね。この作品を、 「おもろいで!」 と推奨するのは、たぶん、そのあたりも関係しているでしょうね(笑)。
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最終更新日
2024.05.20 23:45:17
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