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カテゴリ:週刊マンガ便「コミック」
武田一義「ペリリュー外伝3」(白泉社) 2024年、8月最後のトラキチクン・マンガ便に入っていました。「ペリリュー外伝2」(白泉社)を先日案内したばかりですが、武田一義「ペリリュー外伝3」(白泉社)です。
所収されているのは『西浜にて』、『ALL ABOUT SUZY』、『長い夜』、『過去と未来と(前・後)』という4つの短編です。 久しぶりにマンガ読んでいて、涙が出ました(笑)。すでに戦争は終わっていたにもかかわらず、敗戦を知らないまま持久作戦と称して抵抗を続ける中で、米軍への降伏を画策して、確か、片倉兵長に撃たれて、文字通り無念の戦死だった小杉伍長という人が、本編「ペリリュー 楽園のゲルニカ」の中にいたと思いますが、『長い夜』には、その小杉さんの「望郷」の思いが、『ALL ABOUT SUZY』には、戦争未亡人としてのこされた、小杉さんの妻志津さんのアメリカでの「戦後」の生活が描かれていました。 敗戦を疑いながら、アメリカ軍のゴミ捨て場を漁ることで生き延び、戦争がすでに終わったことを知ららないまま、抵抗していた小杉さんの暮らしを描いた『長い夜』の、昭和21年、1946年の一コマです。 80年後の今から見れば、下手をすると滑稽ですらある、哀れな敗残兵の姿ということになりますが、果たして、そんなふうに笑うことができるでしょうか。 一方、こちらは1971年、SUZYと名乗ってアメリカで暮らしている志津の夢に出てきたシーンです。夫だった小杉さんが出征する以前の記憶が夢にあらわれます。 マンガは、彼女がアメリカに渡った経緯から、アメリカ人の実業家との平和な暮らしの今を、なんと、自らは復員し、戦後社会を巧みに生き延びてきた片倉兵長との出会いという、まあ、数奇な展開で描いています。もちろん、日本の商社のカタクラが、戦地で夫を殺した張本人であることなど、登場人物のスージーは知りませんが、 読者のボクは、ハッとしちゃうわけです。 で、そのあたりの展開を読みながら・・・、というわけでした。 ペリリューを描き続ける武田一義の「戦争」と「戦後」という、「歴史」に対する生半可ではない深い思いを感じました。 偶然読んでいた半藤一利の「昭和史の明暗」(PHP新書)の中に駆逐艦雪風の話として、ペリリュー島を含むフィリピン海域での兵員や物資の輸送ををめぐって困難を極めた話が出てきたりして、余計にリアルな気分でこのマンガを読みました。武田一義さんが、かなり入念に資料に当たってドラマを構成していらっしゃることにも気づき始めて感心しています。 読み応えのある作品ですよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.09.05 23:31:02
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