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カテゴリ:読書案内「近・現代詩歌」
朝倉裕子「雷がなっている」(編集工房ノア) 70歳の女性が90歳の母との別れを「母の眉」という1冊の詩集にまとめられた朝倉裕子さんの新しいというか、同じ時期にお書きになったらしい詩を集めた「雷がなっている」(編集工房ノア)という詩集を読んでいて、
あっ!? と驚いた詩にであいました。 ぼくのこと君にどうみえるのか 詩のなかに出てくる若いフォーク歌手は、友部正人ですね。彼には、同じ題の歌があります。たしか、発売禁止になった「どうして旅に出なかったんだ」というLPに入っていた歌でこんな歌です。 ぼくのこと君にはどう見えるのか 友部正人「ぼく」は「にいさん 寂しそうだね」と声をかけられたのであって、「にいさん しあわせそうだね」っていわれたわけではありません。詩人は「なんだかしあわせそう」と思いながら、自転車の老人の後ろ姿を見ていらっしゃるようです。 阪急の駅の名前が、まだ「西灘」だったころ、水道筋の近くにあった6畳のボクの下宿の部屋に勝手に上がり込んで、電気もつけずに友部正人のLPを繰り返し聞いていた友人がいました。1976年のことです。あれから50年ほどもたったんですね。 詩の題名を見て、すぐに気付きました。で、詩を繰り返し読み直しながら、あの頃、朝倉さんも、どこかで、 「今度、きみにいつ会える?」とか口ずさんでいらっしゃったんじゃないだろうかと、新しい友達を見つけたような嬉しい気持ちになった詩でした。 退職されて、10数年、詩を書き続けていらっしゃる詩人の、おそらく、散歩の途中とかなのでしょうね、ふと浮かんできているのであろう記憶が、読んでいるボクをあのころへと連れ戻していきながら、 「ああ、ほかにも聴いていた人がいたんだ!」という、まあ、あたり前といえばあたり前のことなのですが、なんだか嬉しい発見というか、記憶への共感をしみじみと感じた詩でした。こういうこともあるのですね(笑)。
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最終更新日
2024.09.16 01:26:55
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