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ゴジラ老人シマクマ君の日々

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2024.11.13
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​​ ​キルメン・ウリベ「ムシエ 小さな英雄の物語」(金子奈美訳・白水社)​
 キルメン・ウリベという1970年生まれスペインの作家がいます。バスク語で書いている作家だそうです。だいたい、ボクは、ヨーロッパにどれだけの言葉があって、どんなふうに分布しているのか、全く想像できない、まあ、バスク語とか言われても何にもわからないジジイですが、スペインとフランスの北の国境付近がバスクという地域で、そこには、言語をはじめとして、スペインとかフランスとかいうふうに単純にレッテルを張るわけにはいかない独自の文化空間があるようだというくらいの理解はなんとかあるのですが、ウリベという人はそこの作家で、そこの言葉、バスク語にこだわって書いている人のようです。
​ 今回、ボクが読んだのは白水社エクスリブリスシーズの翻訳で、もちろん原書を読む力など毛頭ありませんので、
​​そこの言葉で!​​
​ ということは、残念ながら実感することはできません。
 で、こんな書き出しでした。
 ゲルニカ爆撃のあと、スペインのバスク自治州首班であったホセ・アントニオ・アギーレは、ついに子どもたちを疎開させる決意を固めた。一九三七年の五月から六月にかけて、一万九千人の子供たちがビルバオの港からヨーロッパ各地に向けて出発した。彼らの多くはフランス、ソ連、イギリス、そしてベルギーへ逃れた。たった数名の教師に付き添われて、親元を遠く離れ、子供たちばかりで異国の地に向かったのだった。
 語っているのは、作家自身です。冒頭のゲルニカ爆撃という記述を読んでピカソの壁画を思い浮かべる人もいらっしゃるでしょう。​
​​ 一九三七年四月二六日、ナチスとイタリアのファシスト党がフランコを支持し、バスク地方の町ゲルニカを爆撃して数百人の市民を殺害した。これに対するピカソの抵抗が、この非人間的な様子を描いた《ゲルニカ》である。
幅八メートル近いモノクロの絵は、さながらニュース映画の映像だ。キュビズムの手法を使い、炎と泣き叫ぶ女性や動物、死んだ子供、倒れた兵士という悪夢のような情景で爆撃の様子をあらわしたこの作品は、壮大な反戦メッセージとして、後にヨーロッパとアメリカを巡回することになる。(「若い読者のための美術史」Chapter32 政治化する芸術P365すばる舎)​​
​ 偶然、同時に読んでいたシャーロット・マリンズという方の「美術史」(すばる舎)という本で出合った記述ですが、​ピカソ​ゲルニカは、1937年パリの万博のスペイン館に展示された作品だそうです。
 案内している「ムシエ 小さな英雄の物語」に戻りますね。題名になっているムシエというのは、上の引用の疎開でバスクビルバオというからハバナ号という船に乗せられた3278人の子供たちの一人としてベルギーに送られたカルメンチュという、1937年当時、8歳だった疎開少女を引きとった、ベルギーの作家ロベール・ムシェという人の名前です。
 上の表紙写真がロベールと、その妻ヴィックカルメン家族写真ですね。
​​ で、簡単に言ってしまえば、そのロベール・ムシエというベルギーの作家の短い生涯を「小さな英雄の物語」として描いたのがこの作品です。ただ、まじめに紹介するとなると、ちょっと大変なんです。​​
 ​​​​​​​​​​​​​​​バスクの青年作家キルメン・ウリベが、1940年代ベルギーで生きていたロベール・ムシエという名を知るのは当人の死から60年後です。で、そこから、反ナチ活動家として収容されていたノイエンガメ収容所1945年ナチスの敗戦を機に解放された後に消息を絶ったロベール・ムシエというベルギーの作家の、まだ、生きていた姿を小説として描ているわけですが、バスクの青年が彼が書くことになる作品の​
​主人公にたどりつくまでの「すべて」​
 ​が、この小説の世界です。​​​​​​​​​​​​​​​
​ スクの作家を、戦時中ベルギーで生きたロベール・ムシエという作家の小さな英雄としての短い生涯に案内するのはカルメン・ムシエというロベールの娘です。上の写真で、お父さんにだっこされている赤んぼうですね。​
 1937年ロベール・ムシエが、バスクから疎開してきた少女を里親として預かります。で、カルメンチュウというその少女の名を、その後生まれた自分の娘に名づけます。
 そのあたりの、バスクからの疎開児童たちその後の経緯は、当時のスペイン市民戦争の顛末、あるいは、ナチスによるベルギー侵攻という社会状況に蹂躙されていくわけですが、そこは、まあ、本書をお読みください。
​​​​​​​​ で、名前をもらった、カルメンというが、父の死の50年後ノイエンガメ収容所解放50周年を機に調べた事実、彼女は、自分の名前になったバスクの少女カルメンチュウのその後も調べつくしたようですが、その内容がキルメン・ウリベという若い作家に語られ、「小さな英雄の物語」というこの作品が生まれたようです。​​​​​
​「英雄はそこかしこにいる、昔も今も、ここにだって、世界中のどこにでも。人のために身を捧げる小さな英雄が」​
​ 2010年キルメン・ウリベ友だちに言った言葉だそうです。その結果、1940年代、ファシズムのあらしが吹き荒れる時代、逃げてきたバスクの少女を救い、自らはナチスの収容所で命を落とした生涯を、忘れ形見として50年の戦後を生きた女性をはじめ、カルメンチュウとともにベルギーに送られて、何とか生き延びている人々を繰り返し取材することで書きあげた作品です。
 ​​​静かで、穏やかな印象の作品ですが、久々に
​​傑作だ!​​
​ と実感しました。
 私たちは2020年代という時代を生きているわけですが、現代という社会の歴史を見つめ直し、人間の社会で生きていくときに何が大切かということを穏やかに語っている作品ですね。歴史をたどるとは、今生きている場所、言葉、考え方、感じ方を問い直すことなのですね。​​







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​​​​​​​​​​​​​​​​​ 追記
 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で楽天IDをお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)​​​​

 

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最終更新日  2024.11.13 18:12:17
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