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カテゴリ:読書
今週読んだ本はこちらです。
この作者が亡くなったこの夏、どの本を読んでもはずれがない、好きな作家でしたので何冊か紹介致しました。 その後その死が自死であったことが解り・・・看病していた奥さまがお休み中に、自身の手で点滴の針を抜き自分自身の人生の幕を下ろされた・・週刊誌等で話題になりました。 本の表紙の熊の姿はユーモラスでさえあるのですが、書かれている内容は大変ハードで迫力のあるものでした。 雑誌「月刊ペン」の依頼を受けて、熊撃ちの猟師やハンターを主人公にした短編としてかかれたもので、ここには七話八人の猟師が登場してきます。 徹底した現地取材と資料を元に書き続けた吉村作品の例にもれず、ここでも昭和45年から46年にかけて月に一度は北海道に渡り熊撃ちの猟師に取材したそうです。 小説の主人公達は実在する猟師であり、物語も実際に起こったことです。 著名な猟師の名前を聞き、住んでいる地へ向かい話を聞くのですが、口数の少ない人が多く、一日がかりでようやく話してもらうなど根気のいる作業であったと作者もあとがきに書いています。 七話に共通する、大自然の中で繰り広げられる熊対熊撃ちの孤独な戦い。 それと平行して描かれているのは当時の寒村に住む人々の貧しい暮らしです。 私達が忘れ去ってしまった当時の生活の貧しさ、困難さ。 人の命を護るためだけではなく、熊を撃つことは貴重な現金収入にも直結していたことでもあった事が解りました。 熊と猟師の死闘の場面は、描写の迫力、臨場感がたっぷりで、熊の恐ろしさが充分すぎるくらいに感じられます。 暴れ回る巨大な熊=自然の驚異の様です。 実際に熊が目の前に迫ってきたときの恐ろしさ、その一瞬には経験からくる冷静な判断が必要なのです。 リアルな描写から、猟師達の緊張感が伝わってきます。 近年は県内でも熊が出没するニュースが流れますが、人と自然との共存の難しさを考えさせられる本でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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