65min: 戦場の独身女(後編)
さてさて、前日でひっぱりましたが、後編です。 wwww1時55分さすがに修行をされたお坊様の霊力のせいか、安全地帯からこだまするヒヨコチームの「お豆くださぁ~~い! お豆くださぁ~~い!」合唱のリズムがお経とシンクロしてきた。 護摩業も最後のクライマックス、般若心経に突入。 1時59分最後のお祈りの鐘が鳴る。周囲が一瞬静まり返る。 後ろが前方向に微妙に微妙に詰め寄ってくる。2時00分お坊様退場。お坊様に続き、年女&年男ご一行様が姿を現し、豆まき台に集結。 手に大枡をそれぞれ持っている。 ご一行様は力強く配置につく。群集はたちまちスーパーサイヤ人に変身した! 物凄い殺気を感じる。 そう!一瞬でそこは戦場に変わった!2時01分とうとうその時はやってきた! 前触れもなく、一人の年男が叫んだ 「鬼はぁ~外!」 「よぉ~し!来い!」 と構える。ご一行様方は、第一声に遅れをとることなく、大きく振りかぶる。次の瞬間、豆が一斉に飛んできた! え? えええええええ!!!!!!!!!!!!!私は、うろたえた。。。 何故なら豆は小袋入りだと疑っていなかったからだ。....これじゃ、豆散弾銃だ。 というか、私達が鬼なのか???!!!!!豆を取ろうと上を向く私たちの顔に豆のスコールが降ってきた。 オー Nooooooo!!!! 痛い!痛すぎるぅ~~!! これがブロック崩しゲームなら、間違いなく最初の一分で体の半分以上は消えていた筈だ。 上から見ている人達には、これは、さながら地獄絵巻に見えていることであろう。が、戦いは始まっているのだ。 今更後にはひけないのだ!小袋入りも多少混じっているらしく、白い袋がちらほら見える。 が、しかし、小袋は前にそびえるおじさん付近から後ろにパスは通らない。そりゃないぜ~ と絶望しながらも、一粒単位でも取らなければ!と、気合を入れなおす。 目をつぶりながら手を伸ばすが、豆は体に当たりながら落ちてゆく。 手に当たっただけでもとても痛い。「目を開けろ! キャッチの基本だ!」 どこからともなく聞えた幻聴。が、しかし、あまりの痛さに上をむけない。 取らなくては! だが上を向くと、豆が顔を直撃する。そのとき、ひらめいた! 「下はどうだ?! どうなんだ?!!」 下に小袋が落ちていないか探そうと、しゃがみかけたら、私の目の前には既におばちゃん達のお尻が並んでいる。 いつの間にか配置は大きく変わっていた。おお 危なかった。 危なく私の顔面はおばちゃんのお尻に突っ込むという難を逃れた。 下は諦めた。 もう、上で勝負をかけるしかない!顔を上げた瞬間、目に豆を受ける。痛くて顔をガードしているその上からも容赦なく豆を打ち込まれる。 そのとき、腕に引っかかる豆発見!やった~!!!!!! とうとう一粒ゲットだ!!!!するとまた 2粒腕の隙間に挟まった。 おおおお!!!! やっとツキが巡ってきたか! と、思われた瞬間。目の前に、ひとつの小袋が私に向かって飛んでくるのが見えた! そびえるおじさんのガードをすり抜けて、ナイスなパスが私の前に。。。。。 おおおおおおおおおおおおおおお とうとうこの時がきた!!! 手をのばす。 素晴らしい! 素晴らしすぎるパスだ! この小袋は神様が私の為に投げてくれたに違いない! もうちょっとだぁ~ 神様ぁ~あ り が 差し出す私の手の先数センチ前に1つの手が突如現れた。 「取ったぁあああああああ~~!!」 え????・・・えええええ???? 何????? 私の豆をだれかがさらった! だれ? 叫んだ奴は、あいつだった! そう、取る気ゼロだった筈の右のカメラ男だ!!!奴は、なんと右手にカメラを狙った手のまま、左手を伸ばしてキャッチしたのだ。。。。 OH マイ ガァーーーーーーーーーーーーーー 思わぬダークホースの出現にその場に固まる私。 まさに茫然自失とはこのことだ。次の瞬間、無情にも終了のコール。。。。。。。戦いは終わった。。。。何をしていたのだろうか。。。 記憶がない。 頭の中が真っ白になる。2時12分年男&年女ご一行様退場。 もう周りのことに関心はゼロであるが、エプロンおばちゃん二人組みは戦利品である袋入りお豆を嬉しそうに数えている。。。 私は・・・・・・・・・・・・・ ?? 「 3粒かよ~~ !!!」 悲しい。。悲しすぎる。 頭の中は錯乱中。 「三村かよぉ~ ?!! 三粒だよぉおお!!」 などと ボケ突っ込みが繰り返される。2時15分豆まき会場より退場。ショックのあまり意識不明のまま石段を駆け下りる。そのまま門へ向かってダッシュ(意味不明行動をとる)年男&年女ご一行様の行列の横を走り抜ける私。そのとき、一人のおじいちゃんの大枡の中に豆が見えた!一瞬迷った私ではあったが、3粒では....足りない! ダッシュでおじいちゃんに近づく。 私は両手を出し「お豆ください!」と哀願。きっと、そのときの私の顔には鬼気迫るものがあったに違いない。 おじいちゃんは豆を一握りくれた。 それを見ていた周りの人たちもおじいちゃんに群がった。一瞬でその大枡は空となった。こうして、私は、やさしい一人の年男により、さらに18粒のお豆を手に入れることが出来たのだ。2時20分帰宅。 合わせて21粒の豆をテーブルに並べてみた。私の年には足なさすぎるが、21歳であると無理やり言い聞かせ一気に食べきった。きっと無病息災は約束された筈である。冷静に考えると、もしかしたら、あのおじいちゃんは家族の為に豆を残していたのではないか??きっとそうに違いない。 すまなかった! おじいちゃんよ! 私は、おじいちゃんの家族への愛を無理やりお裾分けしてもらってしまったのだ。 無病息災を約束された私は、必ずや「明るい納税者」に戻る決意を新たにするのであった。 おじいちゃん、ありがとう! あんた、素敵な年男だよ! そして、来年の作戦を考えた。 開始されたらすぐにしゃがみこもう! そして、割烹着は間違いなく装着だ!一つ学んだ私は、また一つ賢くなったに違いない。