気持ち新たに 安全な自然を取り戻すために
あと一月で一年。地震と津波の被災地の復旧は少しずつ進んできたようで嬉しい限りだ。それに比べ原発事故の福島県下の各地は一向に好転する兆しは見えない。我が町でいえば一部指定されている計画的避難地域は国が直接除染をするようだが、私の所のように避難指定はされていないが、年間5ミリシーベルト/毎時を優に超える地域は、国が費用を出すが町が除染計画を作り実施することになっている。しかし、すっかり汚染された山林に二重、三重に囲まれた地で何処からどのように除染すればいいか良い知恵は浮かばないようで計画作りは遅々として進んでいないようだ。
こうした状況の中で自分の中で被爆への危機意識を持続することは段々難しくなってきた。相手は見えない、臭わないから余計にそうだ。慣れと言うよりも諦めに近い。このまま此処に居ていいのか、東京に戻るか、汚染されてない他の県に移って再び自給自足を目指すか、いずれにしてもこのままではいけないと思い始めた矢先、部落の行政区長に選出されてしまった。人間関係も、年間の行事も、集落の歴史も知らず、何よりも方言がまだ十分に解らずコミュニケーションがままならず固辞したが輪番だし、みんなが協力するからと言い寄られて断りきれなくなった。
これを機会に、もう一度、自分の中に安全、安心意識を取り戻そうと思う。この一年は、きっと除染開始のスタートラインに立つ除染元年になるだろう。これだけ汚され病んでしまった土地を元に戻すのは容易でないし何年かかるか予想もつかない。任期の一年間、できる限り元の自然を取り戻すために役場と住民との間の潤滑油として、また代弁者としての役割を果たせるよう、身を粉にしてやってみようと気持ちを新たにした。
ちょうど選出された翌日に山形の熊野神社に参拝した。背丈をゆうに超える雪中にもかかわらず多くの参詣者でごった返していた。霊験あらたかな神のご加護をいただきながら集落の皆さんの協力を得て、責任を果たすことができるようにと祈念した。