「竜馬駆ける」 続きです
「彦根藩?」 竜馬は怪訝な目を、知らせに来た門番に向けた。「はいとても若い御仁で。」 竜馬には当てが無かった。彦根藩どころか、この江戸ですら、数人しか知り合いはいない。如何してもおかしい。怪しいその御仁に会うには何か危うい感じがした。如何すれば良いのか考えあぐねてしまった。「如何するぜよ」思わず独り言が出た。「分かったぜよ。会うきに。通してくれ。」 少し考えた末、思わず発していた。「...いや。」 しかし直ぐに言った言葉を飲み込んだ。「門前で待っていて貰ってくれ。直ぐに出るきに。」 竜馬の頭の中で、電流が駆け巡っている。彦根藩、彦根藩、彦根藩。幾度探して見ても出ては来なかった。 やはり知らんぜよ。「は~ぁ」と、大きくため息が出た。