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小劇団「シアターフラッグ」。アマチュアとして多くのファンを持つ劇団ではあったが、300万円の負債を抱え解散の危機に。主宰の春川巧は兄の司に泣きついたが、司が出した負債を立て替える条件は、劇団の収益だけで2年で返済できなければ解散するというものだった・・・
メディアワークス文庫の創刊第一弾。 小劇団が舞台ということで、対立点は恋愛かあるいは配役かと思っていたのですが、まさか資金が問題になるとは思いもしませんでした。しかも取り分ではなく負債。 確かに、「シアターフラッグ」のような小劇団というのは収支度外視というか、極端ですが理想形を追い求めるためなら金は惜しみなく使うというイメージがあります。それを真正面から取り上げた姿勢に好感が持てます。 ラブ度はいつもより薄く感じますが、それでも全体に有川さんらしさが見えます。そのひとつが登場するメンバーにつけられた渾名。特に際立っているのが司につけられた「鉄血宰相」。ぴたっとはまりました。 その鉄血宰相・春川司が正式に製作として加入したわけではないのに、なぜか黒幕というか中心として深く関わっていくようになります。物語も司の出番が多く、当然のように「シアターフラッグ」のずさんな状況が露わに。本来なら中心にあたる巧を、劇団内の立場だけでなくストーリー上でもすっかり食ってしまった形です。でも、組織の中にはこういう人物が必要なときもありますよね。 恋愛方面はほんのりとした味付け。いくつかの一方通行が一直線に連なっていますが、この辺がどのように変化していくのか、続編があるのならとても楽しみ。もちろん、2年後に返済ができるのかどうかも気になります。 これで続編がなかったら、解答編がない問題編だけのミステリみたい。期待したいなあ。 2010年1月20日読了
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Last updated
2010.01.28 19:13:24
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