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全中2位。輝かしい実績を引っ提げ、横浜市民秋季剣道大会に臨んだ磯山香織。負けるはずのないこの大会で、香織はまさかの敗北を喫してしまう。相手は無名の甲本早苗。打倒甲本を目指し彼女と同じ東松学園へ進学した香織だが、そこには甲本という少女はいなかった・・・
なんだかミステリのようなあらすじになってしまいましたが、決してそんな内容ではありません。正反対のふたりの少女がしのぎを削る青春エンターテインメント小説です。今まで読んだ誉田作品のイメージとはかけ離れています。 早苗と香織は正反対。早苗は剣道歴三年、経験の少なさをセンスでカバーするタイプ。日舞の身のこなしが独特の動きにつながっています。一方香織は剣道一家で、幼いころから剣道一本にストイックに取り組んできたエリート。勝利にかける思いは並外れていて、まさに剣道の鬼です。 こんな対照的なふたりの物語ですから、おもしろくないわけがありません。時にぶつかりあい、また時に檄を飛ばして互いに一歩ずつ進んでいく、そんなふたりの関係がとても輝いて見えます。もちろんそこには挫折もあり、それを乗り越えることで成長していくのです。 共感できるのは、比較的普通な感じの早苗でしょうか。剣道に取り組む姿勢だとか、考え方だとかが理解しやすいのです。それゆえ、読んでいてどこかしら早苗の視点を常に意識していた気がします。反対に香織は少々エキセントリックでとっつきにくい部分があり、東松の剣道部員ならずともなかなか相手をしにくいことでしょう。こんなふたりの視点が短く交互に繰り返される構成になっているのですが、香織視点の章でハラハラして不安になり、早苗視点の章でホッと安心することの連続でした。もっとも、早苗もときに大胆な行動をするので無条件に安心はできませんが。 相容れないように思えたふたりでしたが、「武士道」という言葉のもとに互いに認め合い、切磋琢磨してきました。それだけに最後の出来事はさびしく感じられます。でもこれはふたりの第二章の幕開け。また違った状況での活躍を期待させてくれます。 剣道に関しての知識がなくても、十二分に楽しませてくれるエンターテインメント。この春、映画化されるだけに読むなら今、かな。 2010年3月2日読了
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Last updated
2010.03.09 12:06:25
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