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2010.03.23
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カテゴリ:感想
 サハラ砂漠を横断するキャラバンに取材のため斉木は同行した。目的地へ着いた一行は、ラクダに岩塩を載せ帰路につく。だが、キャラバンからはひとり、またひとりと人が減っていく。そう、砂漠の真ん中での連続殺人だ。一行にはいったい何が起こっているのか(「砂漠を走る船の道」)・・・

 第5回ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を含む連作短編集。傑作。
「砂漠を走る船の道」
 砂漠の真ん中で起きた連続殺人。誰が、何のために・・・まさに受賞にふさわしい短編。砂漠という舞台と殺人の論理的な動機が密接に結びつき、この舞台でしか成り立たないものになっている、非常に完成度が高い本格ミステリ。
「白い巨人(ギガンテ・ブランコ)」
 巨大な風車に逃げ込んだはずの兵士が消えた。どんな方法で。斉木たちは伝説の謎解きを・・・人間消失もの。伝説と体験の二重構造が思ってもみない方向、思ってもみない現実へ展開していくことに驚かされます。気持ちの良い作品でした。
「凍れるルーシー」
 生前の姿を留める遺体、不朽体。ロシア正教の聖人信仰の取材に訪れた斉木が見たものは・・・「砂漠~」同様、動機に感服。ラストもまた世界が変わる様をこの舞台にふさわしく見せてくれます。
「叫び」
 アマゾンの奥深く、少数民族の村でエボラ出血熱と思しき疫病が発生。滅びに瀕する村で不可解な連続殺人が・・・村の惨状は目を覆いたくなるものですが、披露される殺人の論理がまさに悲劇的。残されるものは絶望でした。
「祈り」
 ゴア・ドアはなぜゴア・ドアと呼ばれるのか。森野はクイズを出した・・・祈りの洞窟。続編がほしいという僕の祈りは通じるでしょうか。その祈りを跳ね除けるような美しい締め方です。

 ミステリーズ!新人賞にふさわしい作品集。物語の舞台がこれほどまで活かされた作品集も少ないのではないでしょうか。その土地だからこその論理が強い説得力を持ち、読み手をうならせます。全体に見せ方の巧さが光り、受賞作以外の作品も非常に高い水準にあります。あまり詳しく語れないのが残念。

 また、作品には異郷におけるロマンがあふれていて、ロジックだけでなく物語としての読みごたえも十分。二度三度と読み返すとより味わいを噛みしめられるかも。ミステリなんて、というような方にも読んでほしい短編集です。大きな声でオススメ。

収録作:「砂漠を走る船の道」「白い巨人(ギガンテ・ブランコ)」「凍れるルーシー」「叫び」「祈り」
2010年3月10日読了





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Last updated  2010.03.23 21:50:44
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