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テーマ:ミステリはお好き?(1497)
カテゴリ:感想
悲劇は、「N」のために。同じアパート「野バラ荘」に住み、床上浸水に遭遇したことで始まった杉下希美、安藤望、西崎真人の関係。だが、彼らと野口夫妻が出会ったことで、状況は少しずつ変化していく。希美は同級生の成瀬を巻き込んで、野口奈央子を元気づけるパーティーを発案した・・・
今回も作品全体の構成を生かし、複数視点によるモノローグで真相が明らかになっていく形です。 すべての登場人物のイニシャルが「N」。誰もがそれぞれの「N」のために行動した結果の出来事。 タイトルや登場人物のイニシャルから、誰かが「N」のために殺人を犯したことは容易に察しがつきます。ただ、どの「N」がどの「N」のために行動したのかがポイント。まさかここまで複雑な様相を呈するとは思いもしませんでした。そういった点は予想外。構成は非常に巧みでした。 もっとも、最終的にはっきりする真相には驚きがなく、想定できるものだったと言わざるを得ません。この点が弱く、高く評価しにくい部分です。 また、構成上仕方ないかもしれませんが、登場人物たちが二面性を持っています。それが読者として登場人物に感情移入しにくく、結果として若干の読みにくさに繋がったように思えました。周囲の人物の壊れ方にも妨げられ、読むのにイマイチ時間を要しました。 話題になったデビュー作『告白』から数えて4作目。その『告白』だけは読んでいないのですが、同じ傾向の作品が並べられた印象を強く持ちました。この路線を極めるのもいいのですが、『Story Seller 3』に収められた「楽園」のような作風も捨てがたく、そうしたものに挑戦してもよい気がします。 2010年4月28日読了
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Last updated
2010.05.18 00:02:39
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