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カテゴリ:感想
〈あなた〉と〈わたし〉。名前など必要としないふたりの物語。暴力を振るう恋人直樹ととともに暮らす〈私〉は、母からの金の無心などに耐えかね、何度か手首を切ったことがある。そんなときに出会った、年上で結婚間近の〈あなた〉に心惹かれていく・・・
島本さんの作品を読むのは随分久しぶり。それは、何か新しいもの、そして変化を求めた作品のように見えました。 〈私〉と〈あなた〉。誰もがふたりのことを名前では呼ばず、名前は最後までついに明らかにされません。そのことが、本来社会で多数の他者に囲まれているはずのふたりをより狭い空間に閉じ込め、緊密な関係として描き出します。また、選ばれた言葉のひとつひとつが濃密な空気をつくり、ふたりを包んでいるかのようでした。 そんな空間が存在し、その中にいることをどのように捉えるのか。 登場する人たちは誰も彼も少しずつ歪みをもっており、それをお互いに是認しているような印象がありました。もちろん、人にはそれぞれの生き方があり、同じようにそれぞれ違った形の恋愛もあるでしょう。これもまたその形のひとつ。動き出したことを感じさせるラストシーンが印象的でした。 二度、三度と読み返すと印象が変わってくる気がします。少し時間をあけて、読み返してみます。 この本は「ブクログ」のゲラ本プレゼントでいただきました。ありがとうございます。 2010年5月5日読了
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Last updated
2010.05.21 23:34:52
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