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Neko月@ Re:野村美月 『“文学少女”と死にたがりの道化』(06/14) 深い。 面白い。 はまる。 読む。 サ…
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2010.05.26
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カテゴリ:感想
 残業を終えた前原は妻からの電話を受けた。早く帰ってきてほしいと。帰宅した彼を待ち受けていたのは、妻、自室にこもった息子、認知症を患う母、そして見知らぬ少女の死体だった。息子が殺したという事実に突き当たった彼は、その死体を遺棄するとともに、ひとつのおぞましい計画を頭に描く・・・

 倒叙の形で描き出す、家族の絆の物語。本当に大切なもの、大切なことは何なのか。
 かなり重いテーマを扱った、加賀恭一郎シリーズの一冊。もともとは90年代に書かれた短編だったようですが、それを長編として改稿したものです。もとはどんな作品だったのか、ちょっと読んでみたい気もします。
 前原家にとっては、本当に地獄のような出来事。でも、その原因を作ってしまったのは自分たち。それぞれが互いにそっぽを向いているようなこの家族にとっては、やり直すラストチャンスだったのでしょう。彼らはこの危機にどんな行動をとるのか、試されていたのです。それなのに逃げてしまって。
 こういった犯罪者側の心理をより書き出すためには、やはり倒叙形式があっているようです。事件を知ってからその対応を決め、実行に移す過程での心の動きや考え方がよくわかります。

 前原家と対峙するのはもちろん加賀恭一郎。加賀刑事は今回も切れ者振りを発揮します。今回は従弟の松宮修平が捜査一課の刑事として登場。父親の見舞いにも行かない加賀に対して、彼がおもしろくないのも理解できます。ああ、彼はこれからも登場するのかなあ。
 あっと驚くトリックや心を震わす感動のストーリーを期待すると物足りないのかもしれませんが、殺人事件の関係者になってしまった男の心を追った佳作でした。家族を思う形には様々なものがあることを示してくれました。

関連作:『卒業 雪月花殺人ゲーム』『眠りの森』『どちらかが彼女を殺した』『悪意』『嘘をもうひとつだけ』『新参者
2010年5月9日読了





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Last updated  2010.05.26 19:38:03
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