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テーマ:ミステリはお好き?(1497)
カテゴリ:感想
三年前、自然死として処理された祖父の死にまつわる事件に巻き込まれた城坂論語。いま、私的裁判〈双龍会〉が開かれ、彼はその被告として裁かれる立場にある。事件の日に時間をともにし突然消えた謎の女性〈ルージュ〉の疑惑を主張し、弁護人〈青龍師〉に瓶賀流をたてた論語だが、その目的は・・・
どんでん返し連発の法廷劇。これは傑作と呼んで良いでしょう。 前半が論語と〈ルージュ〉との二時間ほどの会話、後半は私的裁判〈双龍会〉という構成。前半の狐と狸の化かし合いのような会話は、丁々発止というよりはのらりくらりとかわしながら隙を突くようなやり取り。これがテンポよく続き、読む者を飽きさせません。 これだけでも楽しいのですが、驚きなのは後半の法廷劇。京都という土地柄からあってもおかしくなさそうな私的裁判〈双龍会〉ですが、このやり取りが実におもしろいのです。何せどんでん返しの連続。予想できない展開が読者を引き込んで離しません。 論理的に相手をやり込めていくことももちろん必要ですが、それよりもハッタリやでっちあげ、その場の勢いがものを言う〈双龍会〉。ハッタリをかまそうがなんだろうが、それがハッタリだと証明されなければいいのです。とにかくロジックで反論させなければいいのです。 物語の筋を語りすぎるのは興を削いでしまうのでほどほどにしますが、ただ一点だけ。論語と流をはじめとした登場人物たちの考えや目的まで追っていくと、微妙なズレもあっておもしろさが更に増してきます。登場人物もなかなかのもので、特に龍樹落花は最高でした。 法廷ミステリであると同時に恋愛小説としても読めるこの作品。どうせ読むなら、読む側も〈双龍会〉を傍聴するかのように勢いに乗って読んでみましょう。あるいは論語の〈ルージュ〉への想いに共感してみましょう。ガツンと来ませんか? 講談社BOXということで手に取りにくいことも想像できますが、そこで躊躇せずにぜひ読んでほしい一冊。きっと損はしないはずです。講談社BOX、侮れませんよ。 2010年7月3日読了
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Last updated
2010.07.20 21:28:13
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