誼阿古 『クレイジーフラミンゴの秋』
菅野晴の二学期は、たった13票で学級委員に選ばれてしまったことから始まった。陰口、圧力、くだらない意地・・・女の子の作り出す社会に辟易し身の置き場を失いつつあった晴には、洋楽やアニメなど好きなことを話せる男の子たちとの輪にも入りきれなかった。。学校も先生もクラスの子も自分もみんなバッカみたい。そう考える晴だが、やる気のなさそうな担任の原田だけにはちょっと違うようなものを感じていた。少女から大人へ、踏み出した一歩を描く、ノスタルジックな青春小説。 よかった。すごく。前作よりも。今でも晴が裏拍で歌う「Ob-La-Di,Ob-La-Da」が聞こえてくるような気がします。 『クレイジーカンガルーの夏』からのスピンオフ。前作でも学級委員になった冽史がおでこが広く眉がぼおっと太い学級委員の女の子と噂になったようなことが記述されているので、この子が晴なんでしょう。 中学一年生というのは大人でもなく子どもでもないような年齢で、どちらかといえば晴はまだ子ども寄り。だから思ったこと、言わなくてもいいようなこともつい口に出してしまう。その裏返しに、清純で美しさを保っていて、まっすぐなのです。だから読んでいて気持ちがいいのです。 冽史の優等生ぶりは相変わらずで、もう本当に表彰状もの。まさに担任の原田が「学級委員は俺に楽をさせろ」と言うのを体言したかのよう。本当にできすぎた子なので、「こんな奴いないよ」と言いたくなるくらい。原田も前作に登場しているのですが、常にやる気がなさそうでそれでいて余裕たっぷりというキャラクターなので、冬休みのうろたえようはなかなかおもしろかったですね。夏休みにあれがあって冬休みがこれじゃ教師も大変です。 一年二組の生徒たちだけでなく、前作にも登場した広樹や秀一、三年の大内や三上など登場人物が大勢で、しかも呼び方が人によって少しずつ異なったりするのでやや掴みづらいのが難点かな。まあ、そんなこと瑣末な問題で気にならないけれど。 僕にもこんな年の頃があって、自分がどうしたらよいのか、どうしたいのかわからなくて、なんだか自分でも持て余し気味だったようなに思うのですが、そんな感覚を思い出しました。 巻末に楽曲のリストがつけられているように、作中には洋楽中心で次から次へと楽曲が登場します。僕は聴いたことのない曲もあるのですが、やはり知っている曲だとそこでさっとその場のイメージが浮かびます。効果的ですね。 できることならば、カンガルーからフラミンゴへという順番で読んでほしいですね。その方が逆に読むよりもより堪能できることでしょう。作品です。ライトノベルレーベルからの作品ですが、かつて中学生だった人を中心にオススメします。関連作:『クレイジーカンガルーの夏』2007年2月25日読了