河野裕 『サクラダリセット 3 MEMORY in CHILDREN』
相麻菫は問いかけた。「私たちの中に、アンドロイドがいると仮定しましょう」と。未来視の能力を持つ彼女が浅井ケイに投げかけたその問いはどんな意味を持つのか。そしてその答えは。ケイはリセット能力を持つ春埼美空と出会い、三人は考え始めた。二年前の夏の出来事・・・ 早くもシリーズ第三弾。今回はケイと春埼の出会いの頃を描いた過去物語です。前二作において限りなくケイに従い続けてきた春埼。その信頼関係の原点をここに見た気がします。その感情の薄さから危うく感じられた現在の春埼ですが、この時点ではさらに輪をかけた危うさ。触れたら壊れるという感覚でした。無論、それを食い止めたのはケイへの信頼、言いかえれば依存でしょう。 このような関係だからこそ、以前の「私がリセットを使えなくなったとして。私と貴方の関係性は、何か変化しますか?」という春埼の発言につながるのでしょう。そして、ふたりの関係に変化が訪れるとしたら、それは意図するにせよしないにせよケイの変化がもたらすものなのでしょう。 今回相麻菫がとった行動の真意はどうもよくわかりません。未来視の能力を持つ彼女だけに、きっと何かが視え、そしてそれを理解したうえで行動しているはず。そこには理由が必ず存在するのです。そのあたりはきっとこれから明らかになっていくのでしょうね。 透明感のある独特の文章は健在。まさに無色透明純粋な世界といった感じでした。そこに加えられる少量の異物が、物語に幅と奥行きを与えているように見えます。次も楽しみ。関連作:『サクラダリセット CAT,GHOST and REVOLUTION SUNDAY』『サクラダリセット 2 WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL』2010年9月27日読了