桜庭一樹 『少女七竈と七人の可愛そうな大人』
“わたし、川村七竈十七歳はたいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった。” この一言にすべてが集約された感のある桜庭さんの最新作『少女七竃と七人の可愛そうな大人』。繊細な少女を描くことにかけては評価が高い桜庭さんですが、今回はいつにも増してうまさを感じます。 おそらくは現在の旭川を舞台にしているであろうに、どこか時代がかった雰囲気を持っている七竈と雪風。 二人が作り出す雪の中の静謐な世界。 二人が作り出すどことなくリズミカルな会話。 二人が作り出す世界に侵入する異物たち・・・どことなく、近代古典文学のような風格すら漂っています。 川村優奈の辻斬りのような男性経験がこの静かで悲しい物語のすべてに繋がっていて、宿命によって翻弄される人生が物語の最後ではきれいにまとまる素晴らしさ、そして何より物語の面白さを感じました。 桜庭さんの代表作となるであろう一冊。オススメです。2006年7月25日読了