周利重孝 『夏の扉』
昨夜、周利重孝さんの『夏の扉』を読了しました。 親友の秀雄が消えた。コンビニ強盗の疑いをかけられたまま。どうやら僕が水死体を見つけたことが、秀雄の失踪の原因のひとつらしい。僕はかつての恋人遙香とともに秀雄を追った・・・ ややたどたどしいような、クセのある文体。瑞々しく、それでいてなんとなく枯れたような雰囲気を漂わせ、見事に僕のツボにはまった感じでした。 夏、海、恋、友情・・・代表的な青春の要素を数多く含み、どこかに樋口有介と似た雰囲気を感じました。浪人生活を続け、秀雄に対する劣等感を感じ、しかも遙香への未練は断ちがたいという主人公誠司。こんなある意味よくあるような設定かも知れませんが、ストーリーの中でうまく消化されていた気がします。 ミステリとしては謎解きがやや散漫で、いろいろな要素を取り込みすぎたような感じですが、それほど気にはなりませんでした。 新人なだけに今後どういう方向に行くのかわかりませんが、もう一度こんな路線の作品を読んでみたいです。