福田和代 『TOKYO BLACKOUT』
夏真っ盛り、8月24日夜のことだった。首都東京の電力を一手に担う東都電力に入った連絡。信濃幹線、東北連系線・・・東京への動脈が次々と断たれていく。それは悪夢のような東京大停電の始まりを意味していた・・・ あらすじを読むだけでもワクワクしてくるようなクライシス・ノベル。結論から述べるならば、残念でしたというほかありません。おもしろかったからこそ、余計に。 ひとりの保守要員の男が殺害されるところから始まるこの物語。事件の発生から対応策への取り組みあたりはこういったトラブル時の東都電力の動きというか奮闘ぶりが綿密に描かれ、まさに力作という言葉が相応しい作品です。特に輪番停電に入るために新システムを稼働させようというあたりはなかなかの緊迫感。 東都電力や警察関係の人々はもちろんですが、それだけでなく実際に大停電に至った際の市井の人々の動揺や奮闘までもしっかりと描かれていて、意外なところで楽しませてくれます。 しかしながら、物語の後半にいたり犯人の姿がはっきりしてくると、焦点が彼らに集中して、他の人々が捨て置かれてしまったような気がします。結果的にはいろいろなことを詰め込もうとしすぎたのでしょうか。前半とは明らかに状況が異なるのでやむを得ない部分はあるでしょうが、これはちょっと残念でした。 また、犯人がこの大停電を起こした動機も正直如何なものかと思われます。あまり詳しくは触れられませんが、この部分を納得できるものにしてほしかったですね。 そうは言っても、デビュー作『ヴィズ・ゼロ』をも読みたくさせる力作。これからの福田さんに期待です。2009年1月2日読了