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カテゴリ:読書
ちょっと前、南方熊楠(みなかたくまぐす)の名前を出しましたが、その後ですぐ近所の図書館行って職員に見つけてもらったんですよね、神坂次郎著〝縛られた巨人”南方熊楠の生涯と言う本と別冊太陽の〝森羅万象に挑んだ巨人”と言う写真中心の本。
そこの図書館、結構センスのある本が置いてあって思いがけない本を見つけたりするんですよ。 神坂次郎の方は1987年発行と言うことで、紙が茶色くなってて古本の匂いがする。 別冊太陽の方は2012年発行で新しくて大量の熊楠の資料が載ってる。 それにしても絶妙な組み合わせで見つけてくれましたよ。 神坂次郎の本は、熊楠は几帳面に日記みたいのを付けてたみたいで、それに知人たちとの書簡も多いから時系列を調べてすり合わせたんでしょうね、丹念に個人名やらを書いてある。 どうせ私は見たってすぐ忘れてしまうから飛ばしてもよさそうなものだったけど、一字一字追っちゃうんですよね。 それに明治から昭和まで生きた人ですから、日記も手紙も昔の文の書き方で(候とか)、大体漢字が読めない、読めても意味がイマイチと言うのが1割、いや2割はあった。 それでも前後の関係から推測したり、スマホで読み方や意味を調べたり、その中で書いてる人の写真や研究の資料や手紙の字、ペンで書いた英語の論文のコピーやらを別冊太陽で見ながらの読書。 すごい自分、こんなこと今まであったかなあ。 それと言うのもこの熊楠と言う男の魅力が半端なかったからで流し読みなんかしたくなかった。 彼は東大に入ったけど面白くない、俺は学歴なんかにこだわる小者じゃない、自分がやりたいことをやるんだ、とばかりにすぐに中退してアメリカに渡っちゃうんですね。 もうそこからがすごい、アメリカの大学に行ってもつまらないからすぐ中退。 あれやこれやでイギリスにわたり、そこで何年か滞在するんですが、彼は仕事をしないで勉強ばかりしてるからお金がない。親に仕送りをしてもらってるけど貧しいことこの上ない。 それもいつしか届かなくなって、極貧になるんですけど知り合う人間たちがこれまたすごい。 彼は貧しい服装だが日本人の誇りは1ミリも捨てない、同じ日本人がけっこう滞在してるが彼らの卑屈さをバカにしてるし、虚飾に興味はないという感じで研究論文を世界的科学誌に投稿したり博物館で英学者の手伝いをしたり、知り合いを数多く作るんですね、寄ってくるというか。 そこに孫文・・・中国の、名前は知ってるけど私はよく知らない革命家が登場してその後も友情が続いたみたいです。 いよいよ生活が苦しくなって日本に帰ってくるんですが、親が亡くなってて財産が弟の勝手にされてしまってすごく苦労するんですね。 弟の嫁が強欲な女で、その嫁に弟はすごく左右された面もあるでしょうが、持って生まれたものでもあるんでしょうね、理解の無い欲深な兄弟に熊楠が哀れでした。 熊楠は逞しく激しい人生を生きるのですが、賢く自慢の息子が19歳の時に受験した時、狂っちゃうんですね、文字通りウツとかじゃなく狂っちゃう。 繊細で優しい息子が狂ったのは、自分が大酒飲みだったからだと思い込んでそれから一切酒をやめた、と書いてるものもあったのですが、熊楠が酒を止めたのは息子の病気の7年位前に病気になった時からだとこの本には書いてました。 でも熊楠が大酒飲みなことは何度も出てきますし、息子に酒の害のある遺伝子を与えてしまったと悔やむのは熊楠がそのようなことも研究してる中で知識があったと思いますから真実味があるし切ないです。 熊楠は4次元にも言及してて、あの森羅万象に知識欲を追求した天才脳は通常人の100倍位活動してたんでしょうね。 でも世俗のことに煩わされて、いやその苦しさも入っての熊楠の人生だったんでしょう、合掌。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.05.30 21:55:05
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