カテゴリ:短歌
種になりゆく
秋澄みて高きみそらに吸はれゆく 風船の赤ちひさくなりぬ ひとつづゝもやしの髭を取る夕べ 下拵へも愉しかりけり 名が変はりペルソナの数増へてゆく 家内・母・嫁・サンタクロース 惰性にてぬるき布団を出れぬ朝 夢かうつゝか春のあしおと 花ひらくとなりのさくら愛づ風を かたき蕾はいかに聞くらむ 結婚に仕事に恋に子育てに をんな三十みな迷ひけり うつりゆく紫陽花のいろ知りながら 我は無力なカタツムリなり 新たなるいのちの響き感づれば 愛しと思ふ胎のふくらみ 穏やかに落ちる夕日のオレンジに 夏と秋とが溶け合つてゐる ほろほろと種になりゆく向日葵よ かたちを変へるしあわせもあり 久しぶりの短歌です。 「第30回 熊本県民文芸賞」入選しました。 今の私は きらきらした恋の歌や がむしゃらな仕事の歌は もう詠めません。 子育ての歌や 介護の歌も まだ詠めません。 でも、 それでいいんだと思う。 今の私には、 今の私にしか見ることの出来ない景色が 確実にあり、 そこに等身大の自分で向き合うことこそが 大切なんだと。 もっともっと 毎日を丁寧に生きていきたいと、 私はいつも思っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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