カテゴリ:短歌
総じて、歌集というものは、 読むのにものすごくエネルギーを要す。 掲載量は1ページに3~4首、多くても5~6首が普通なのだが、 1首にこめられた情報が多い、というか1首1首の濃度が濃い。 そこで「行間を読む」チカラが必要とされるのであろう。 「歌を詠む」ことと同じくらい、「歌を読む」こともまた、難しい。 言葉には「気息」というものがある。 長い文章のどこで句読点を打つか、とか、 アトランダムな言葉をどのように並べ替えるか、とか、 要は、「その人の持つことばのリズム」みたいなものである。 私は、この永井陽子という歌人が持つ気息が、 とてもとても好きなのだ。 過日、短歌に関するエッセイを書く機会があり、 そのなかに永井陽子の歌を引用できないものかと取り寄せた 『永井陽子全歌集』。 『葦牙』『なよたけ拾遺』『樟の木の歌』『ふしぎな楽器』 『モーツァルトの電話帳』『てまり唄』 『小さなヴァイオリンが欲しくて』の全7歌集を1冊にまとめたものである。 早くから類稀なる才覚を発揮し、数々の秀歌を残し、 2000年1月26日に惜しまれながら48才の若さでこの世を去った、永井陽子。 あぁ、巧いなぁ、という歌が本当にたくさんあり、 使ってみたいと思わせるような表現もまたたくさんあり。 私もいつか、このひとに近づきたいと、 読み終わった後に強く思わされる1冊である。 最後に、私の好きな歌をいくつか。 蛇口よりあふるるみづが光りをりひと日を生きてかへり来し掌に ふかくふかく吸ふ秋の彩(いろ)肺胞はいまあざやかな陽のステンドグラス べくべからべくべかりべしべきべけれすずかけ並木来る鼓笛隊 完璧に人に負けたる日がをはり<ぜつばう>と書く書きて忘るる 永井 陽子 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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