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空はとんび

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2007年09月の記事

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仏壇などなど。。。。

　今日はばーちゃんと仏壇を見に行った。　今までは某宗教団体ご用達のものしかなかったので、新しく購入するのだ。　実は密かに心配していたのだ。葬儀もその団体が仕切ってしまうのではないかと。もしそうなら、行かないと実家の母は言っていた。　でも、どうやら、ばーちゃんはその団体とは手を切ったらしい。おかげでみんなに褒めてもらえる葬儀ができた。　しかし、高いねえ。たった半間の仏壇が１００万円。まあ、定価で売ることはないだろうけど、なんやかんや物入りですな。　実家の地方は浄土真宗なので、そりゃあ立派な仏壇が仏間に燦然と輝いている。きんきらきんである。祖父の葬儀のときはお坊さんもきんきらきんで登場して、ドラが鳴り響き、大合唱のお経だった。　あれって、いったいいくらかかっていたのかしらん。　　その後ほんとはお墓の石を見に行くはずだったのだけれど、一周忌までに建てればいいと夫がいう。もう地所はあるんだから一気にやってしまったほうが楽だと思うのだが。。。。　で、診断書などを頼みに病院へ行ったり公共料金の名義変更なども私がやることになった。　ついでにじーちゃんの携帯電話の名義も代えようと、ドコモショップに出かける。本人がいないとだめだというので、再びばーちゃんを連れて来店。　しかし、あれほど言ったのにばーちゃんは保険証を忘れてきた。で、委任状の用紙の書き方を教えてもらって、明日私が買うことになった。　らくらく操作バージョンの中にも写真が撮れるのがあって、今度はこれにしたらと薦める。　ばーちゃんも写真を撮るようになったらお出かけも楽しくなるかもしれない。　今日もばーちゃんの妹たちがやってきて、にぎやかだった。　この前の食事のとき、ぺーくんはあまりの五月蝿さに、すっかり閉口していたんだった。　この姉妹、ほんとに元気なんだよね。　ところで、葬儀での挨拶がうけて、だんなの評判はうなぎのぼりである。お寺さんも、葬儀屋さんもすんごく褒めていた。なかなか自分の言葉で何も見ないで話せる人はいないんだって。しかも、あの人って見た目は真面目な優しそうな好人物だから、「いい息子さんをもって、幸せだねえ」って何度もばーちゃんは言われたそうである。　まったく得な奴である。いえるのは、私が側にいないほうが、奴はがんばるってことだ。顔を見るとすぐ手を抜くから、できるだけ任せることにしよう。うん。　

2007年09月30日

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池谷薫監督『蟻の兵隊』

　地域の名作映画鑑賞会で上映された作品。　昭和２３年まで終戦を知らずに中国大陸で戦争を続けた元日本兵たちが、「志願して残留した」とする国家に対して裁判を起こす。高齢の原告たちが次々とこの世を去っていく中で、奥村和一氏は証拠を探すために単身中国に向かう。　戦争で人を殺すことは罪ではないのかということを、彼はこの６０年間ずっと問い続けてきたのでしょう。妻にも言えなかったその事実を、かつて日本兵や中国人に強姦されたという女性が優しく受け入れてくれます。「今のあなたはとても悪い人には見えません。奥さんに本当のことを語るべきです」と彼女は言います。　はじめは、自分の行為を正当化するために奥村氏は出かけたのではないかと思いました。でも彼の全身から溢れる執念は、人殺しとしての自分をさらけ出して自らを断罪することで国家の罪を問おうとするものでした。　最高司令官が、自分の保身のために奥村氏たちを中国の内戦の要員に「売った」事実が記述されている文書を見つけたとき、奥村氏は叫びます。けれど、最高裁でも原告の訴えは棄却されてしまいました。　厳しい。あまりに厳しい生き様を、ぬるま湯にどっぷり浸かっている自分はどうやって見つめたらいいのだろう、と思いました。　本当に、愚痴を言っている場合ではないのでした。

2007年09月29日

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包帯クラブ

　心の傷に包帯を巻いてあげる。なんと優しい行いなのでしょうか、と原作を読んだときに書いた感想で述べました。　　キャストはよかったです。石原さとみさんも自然だったし、柳楽くんもはまっていたと思います。　待望の映画だっただけに、その肝心な包帯の巻き方に違和感がありました。　とくにサッカーボールの蝶々結び。それじゃリボンと変わらないじゃない。そんな隙間だらけで傷は治せませんよ、といいたくなりました。他の包帯も、もっと丁寧に巻いてほしかったな。　原作とは違う展開の部分もちょっとありきたりだったかなあ。　堤監督の作品は、悪くはないんです。でも後世に残る名作とはいえないなあ。

2007年09月29日

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今後

　今日はほとんど遠足のような仕事だったので帰ってから爆睡してしまった。息子たちがバイトに出かけたのは知っていたが、忘れ物を取りに来たのかと思ったら９時過ぎていた。　体も疲れているが、向こうに行く気がしないのは、あの二人が今後どうしようと思っているかが全く分からないからである。　じーちゃん生存中に何度も話をしてほしいと言ったが、問題を先送りするタイプだから今になっても結論は出ないのだ。そうこうしているうちに「しょうがないなあ、俺がやるか」と腰を上げるのが、じーちゃんだったのだ。　昨日はぱーくんと話していると、「そんなに嫌なら離婚するしかないんじゃないの？」なんて言われた。いっそ今のうちを売り払って東京に通える範囲のところに３人で引っ越すか、と言うと、それはお断りされた。そりゃそうか。　じーちゃんがばーちゃんのことだけを考えて生きてきたような人だっただけに、自分の場合は、とつい考えてしまう。　果たして夫は私のことを愛していたことがあったのだろうか。　気が小さいだけに押しかけてきた女を断れなかっただけではなかったか。　ただ我慢することで「責任」を取ろうとしてきただけだったのではないか。　そう考えると、私を受け入れ、認めてくれたのはじーちゃんだけだったような気がする。　じーちゃんが亡き今、そろそろ夫を解放してやってもいいのかもしれない。　その「真実」を話す勇気と聞く勇気があるかどうか、かな。

2007年09月27日

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もうじーちゃんはいないけれど

　住職さんの話によると、彼岸の入りに鬼籍に入るというのは、とても功徳のあることなのだそうな。今はホールで済ませてしまうことが多い中、葬儀はお寺で行った。なかなか立派な式だった。　今更なんだけど、ばーちゃんの誕生日の前に、じーちゃんの夢を見た。　じーちゃんになにやら怪しげなものが乗り移るのが見えて、急にじーちゃんが元気になるというもの。でも顔は明らかにじーちゃんではない。周りは元気になったと喜んでいるが、私は「あんたじーちゃんじゃないでしょ。じーちゃんなら、ばーちゃんの誕生日を忘れるわけがない。何日か、いってごらんなさい」と詰め寄った。　その怪しいじーちゃんは、「いつだったかなあ、分かりやすい日だったかなあ」ととぼけるのだった。　じーちゃんはばーちゃんの誕生日を過ぎてから容態が変わった。　やはりあれはじーちゃんが夢枕に立ったってことなんじゃないでしょうか。　会館でのお通夜の晩、ばーちゃんは「ベッドがないから」と家に帰ってしまったので、その夜は徹夜に近かった。実家の両親もいっしょだったからおしゃべりしていたんだけどね。その前はじーちゃんのお兄さんたちとじーちゃんの若かったころの思い出話を聞いて、ぺーぱーといっしょに「こんなに楽しくていいのかな」と笑っていたのだった。　で、葬儀は着物を着たし、終わってから隣組みに挨拶して回ったからけっこう遅くなった。それから姉や友人にお礼の電話をしていると２時半になってしまった。　次の日から仕事には出て、お通夜に来ていただいたお礼を述べて、仕事をする。みんなが「たいへんでしょう」とねぎらってくださったが、だんなが休みをとっているので大丈夫、と答えた。　しかし、午後にばーちゃんちに行ってみると、ふたりで名簿を見ていただけだった。　役所はもちろんのこと、買い物もしていない。　じーちゃんに供える煮物を大量に作って、ばーちゃんの食べた食器も洗って、残り物をもって帰ってバイトから帰った息子と食べたのが１０時近く。もう心臓がばくばくでありました。なのに寝たのは２時近く。なぜ？　今日からお弁当も作らねばならず、仕事も外に出たし、パソコンを使っているうちにこっくりしてしまった。　昨日のばーちゃんが完全に私を当てにしていたことを思うと、家に着いたらもうどっと疲れてきて、だんなに電話して、今日は休ませてもらうことにする。息子たちも向こうで店屋物を食べてもらうことにした。　７時まで寝て、ようやく疲れが取れた感じ。　帰ってきた息子たちがまず「調子はどうですか」と聞いてきた。優しい奴らである。　きのうばーちゃんちを出るときにだんなが言ったのは「寝坊しないようにね」だった。　じーちゃんが病に倒れて一年９ヶ月。この人の口から一度だって感謝の言葉を聞いたことはない。　やはり葬儀のときの挨拶は録音しておくべきだったな。。。。

2007年09月26日

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葬儀

　じーちゃんの葬儀は滞りなく終了しました。　ぱーくんが読んだ弔辞もがんばったのですが、だんなの最後の挨拶が上手でした。　ぺーくんが描いたじーちゃんへの贈るイラストです。　じーちゃんといっしょに昇天しました。

2007年09月24日

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お通夜と葬儀

　じーちゃんは木曜に亡くなって、その夜待ちかねた家に戻ってきた。　火葬場の都合でお通夜は明日、日曜で、葬儀は月曜になった。　おかげでゆっくりと準備ができることになった。遠方の兄妹たちもいったん戻って、昨夜は身内だけで過ごした。ぺーとぱーが交代で朝までお線香の番をしてくれた。　きっとじーちゃんはきちんとして式を迎えなさいというだろうと、今日はばーちゃんと私は美容院へ行ってきた。喪服の準備もできて、なんだかこんなにゆっくりできるのが不思議なくらいである。　今日はお寺に行ってきた。じーちゃんは３年ほど前にお墓の場所は確保してあった。何から何までばーちゃんに世話をかけないようにしていたんだなと改めて感動。　住職さんにじーちゃんの話をすると、とても感心しておられた。　棺の中のじーちゃんは眠っているとしか思えないくらいきれいな顔をしたままだ。　今にも目を開けそうなじーちゃんに「明日また来るね」と言って帰ってきた。

2007年09月22日

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報告

　じーちゃんは昨夜１９時３１分に永眠しました。

2007年09月20日

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緊急招集

　よりによって『包帯クラブ』の映画を見ている間に連絡があった。　じーちゃんの容態が変わった。右手の麻痺がひどくなり、昼の食事も全部吐いた。　だんなは病院に行っていて、そのときはまだすぐというほどではなかったので、のんきに明日のお弁当の買い物をしていた。６時過ぎに再び電話。　容態が急変したので子どもを連れて病院にこいということだった。　ぱーくんはまだ帰宅途中だったのでそのまま病院へ。ペー君を連れてコンビニでおにぎりを買って病院へ行く。　じーちゃんは酸素マスクもつけていなくて、思ったよりずっと安定していた。　それから親戚がぞろぞろと入れ替わり立ち代わり訪れた。　遠くからの親戚も新幹線に乗っているという。　じーちゃんは何の反応もない。でもすやすや眠っている。　９時になると付き添いはできないというので、結局明日の朝まで家に帰ることにする。　遠い親戚はじーちゃんちに泊まることにした。だんなも向こうに泊まる。　明日の朝次第だ。

2007年09月19日

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敬老の日

　連休とはいっても何もすることがなく過ぎていった。　バイトを始めてからあまり行けなかった息子たちとだんなの４人で病院へ行く。このメンバーで行くのは初めてだな。　じーちゃんはうとうとしており、視力はほとんどないようだった。　でも孫の「おい、じっちゃん」という呼びかけには口をもぞもぞと動かしていた。　うっすらと涙がにじんでいた。　だんなはやはり離れて見ているだけだった。　それから寿司屋に寄ってばーちゃんちに行く。　もうすぐばーちゃんの誕生日ということもあり、ほんとはどこかで食べたいと自分は言ったのだった。しかし、そうするとだんなの車を使わねばならず、食べれば必ず飲むだんなが運転することはないので、それは却下となった。　じゃあどうするの、という質問をしたのがお昼ごろ。　回答はなし。追求することをしなければ、だんなはそのまま布団に入ってしまう。　もうこのときビール飲んでたし。　まあ、そんなわけで、一番簡単な寿司になったわけだ。　一応花束なんかを持っていく。　相撲をやっていたので会話が途切れることはなかった。久しぶりににぎやかでうれしかったと、ばーちゃんは息子たちにお小遣いを渡していた。　じーちゃんもいた昨年は、ずいぶん長居をしたものだった。じーちゃんがいないと、食べ終わるともうすることがない。ばーちゃんは、なんていうか、ピントが外れているのだ。そういうところがじーちゃんには可愛かったのだろうけど。　でも、これからはしっかりしていってもらわないと困る。　洗い物をすませて、明日の買い物をしてくるついでにばーちゃんに買うものはないかと聞くと、メモを渡された。肉や野菜は一昨日いっしょに買ったばかりだったけど、けっこうメモしてある。　ニンニク、糸こんにゃく、それにローリエも書いてあった。　　ぱーくんが玄関まで歩いてきたばーちゃんに「それならスーパーも行けるよ」と言っていた。ばーちゃんは「車が怖いんだよ」と答えた。　例によって私が買い物をしている間はぺーくんがばーちゃんの相手をしていたようだ。ぱーは寝ている。　例によってだんなはビールを飲んでいる壁紙と化す。　帰ってからだんなに「ばーちゃんはローリエを何に使うのだろう？」と聞いてみた。　もしかしたら料理番組かなんかを見て挑戦してみる気になったのかしらん。

2007年09月17日

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熊谷達也『新参教師』

　　熊谷氏といえば『邂逅の森』しか読んでいません。彼なら真面目に教育現場を表現してくれると期待したのですが。。。。　大手の保険会社のリストラ政策の前に企業からの民間力として採用された安藤に、次々と嫌がらせととれる問題が起こる。その犯人捜査を私立探偵に頼むのだが、事態はますます悪い状況に。。。。　教育現場の話ですが、ほとんどといっていいほど生徒が出てきません。作中にも「お前の話には生徒のことが出てこないな」と友人に言わせていますけど、それにしても、こんな気持ちで現場に立ってもらっては困るなあ。　まあ、それがキーポイントになっているお話ってことなんでしょうけど、最後はちょっとうまくいきすぎてませんか？　　新聞でしか教育現場のことを知らなかった安藤が、「残業当たり前、昼休みもない過酷な労働」と評する場面はあります。でも設定を優秀で大人しい生徒が集まる中学校で数学の教師でほとんど活動していない卓球部の顧問としたせいか、ほんとの現場に出ている先生にしたら、「こんな楽な教師はいない」といわれそうです。　登場するふにゃふにゃした探偵は「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」の伊良部とか「チーム・バチスタ」の白鳥に似たキャラです。最近のヒーローはこんなのばっかりですね。それにしてもちょっと中途半端。愛すべき存在にはなっていません。　主人公の安藤にも好感がもてません。　まあ、期待外れってことです。熊谷さんはもっとシビアなのだけ追い求めてほしいなあ。

2007年09月15日

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吐いちゃった

　ここのところずっと安定していたじーちゃんだが、今日行ってみると枕を外して紙おむつみたいなのを敷いていた。　昼間の経管栄養のあと、戻したのだそうだ。今日は痰が多かったらしい。　全てを吐いてしまって相当汚したとのことだったが、じーちゃんはまるで何事もなかったようにとても清潔だった。ほんとにこの病院の対応には頭が下がる。　相撲の時間になってテレビをつけると、なんとなくテレビのほうを向いている。　この前妹３人組がお見舞いに来てくれたのだそうだ。でもやはり反応はほとんどなかったらしい。　こちらが何か言うと、なんとなく目つきや口元に変化があるのは分かる。きっと聞こえてはいるのだろう。　この前ひとりで行った帰りに、向かいの病室に毎日電車とバスで通ってきているおばさんといっしょになったので、買い物のついでだから、と送っていった。多分ばーちゃんより年上だが、とてもしっかりしている人である。　その人から「この前のお礼」と言って絞りのハンカチをいただいた。まあ、そんなの悪いわあと言いながら頂きました。　その人がたいそうわたしのことを褒めていたと、ばーちゃんは言っていた。　「娘だと思っているのよ」とばーちゃんは答えたんだって。　あんまり油断してると、足元掬われるわよって、誰か言ってくれないかなあ。。。。　とにかくこのばーちゃんは人に何かをしてもらうことにかけては天性のものを持っているのだなあとつくづく思ったのだった。

2007年09月13日

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朝比奈あすか『ちいさな甲羅』（群像８月号）

　図書館って雑誌も貸してくれるんですね。（今更）　朝比奈さんの名前も知りませんでした。７６年生まれというから３０歳になったばかりですね。　自分もそうでしたが、女性が結婚して子どもを育てていた３０代前半は世の中から隔離されてしまうような気がします。あるのは狭い狭い「お母さんたち」の集まり。同じ幼稚園に通う子どもを持ち同じマンションに暮らす。彼女たちはいかにその中でうまくやっていくかに細心の注意を払って生きていくのです。　今思えば、もうちょっと気楽にやる方法もあったのに、なぜあんなに思いつめていたのだろう。そんな風に自分の過去と向き合うお話ですね。　子どもだけでなく、妹がからんで幼稚園での居場所を完全になくした主人公は、どんどん崩壊していきます。その過程がすごくリアルです。　かつて学校に通っていたころから培ってきた「周囲との調和」にこそすべてがある女性は、今も多数派を占めているにちがいありません。　自分は女性としては異端のほうなので、あまり群れたことがありません。　映画も喫茶店も買い物も、ほとんど一人で行きます。　ときどき、映画館やファミレスなどで仲良くおしゃべりしている人達を見かけます。羨ましく思ったこともあります。　でも、彼女たちはこんな風に常にボス的な人に気を遣い、好きでもないものに付き合ったりしているのかもしれないな、と思いました。　まあ、群れないことの最大の理由は、そういった周囲に合わせること事態ができないということなのですけど。　「空気読めよ」って台詞が最近よく聞かれますけど、彼らには色がついた空気が見えるのかしらん。まあ、濁った空気にはあまり近寄らないのが一番いいみたいです。

2007年09月11日

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阿部和重『グランド・フィナーレ』

　１３２回芥川賞受賞、という帯がなかったら、たぶん読破しなかったでしょう。それだけ前半はロリコン男が妻に離婚されてそれでも娘への執着を延々と語るという、なんとも情けない話なのです。はじめはちょっとした揉め事で妻がＤＶを主張して離婚した、みたいなことを言っていたのですが、実はこの男、教育映画の仕事に就きながら児童ポルノの斡旋をしており、あげくに娘の全裸写真まで「コレクション」していたというのだから、奥さんが断固拒絶するのも当たり前というものです。　しかも友人と呼べる人達とはドラッグ（バツ）を風邪薬代わりに使用しており、そんな奴らがチェチェン紛争とかウガンダの武装集団の話なんかを語っても、とても同調はできません。　後半になっても故郷で兄夫婦に食わせてもらっていながら田舎の文句を偉そうに語り続け、まったく腹立たしい限り。　そんなわけで、キオスクで売っていたから買っただけで、読まなくてもいいや、としばらく放っておいたのでした。　で、久しぶりに読んでみたのです。それから話はかなり変わってきます。　でも、え？これで終わり？うそでしょ。　文庫本だったので高橋源一郎氏の解説を読んじゃいました。同じようなことを述べていらっしゃったのでちょっと安心。高橋氏は早稲田で現代文学論の講義をなさっているのですね。そこで学生たちに読ませたら、驚くべき発見をした、ということでした。　なるほど。若い人はこう読むのか。　もしかしたら漱石の「三四郎」なども、当時としては、こんな感じだったのかもしれません。　まあ、高橋氏の解説がなかったら、こんなこと思わなかったでしょうけど。　

2007年09月10日

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福田ますみ『でっちあげ』

　副題・福岡「殺人教師」事件の真相。渾身のルポジュタージュであります。何かの賞をとったということで読んでみました。　平成１５年というからたった２年前の事件。ワイドショーなどでも相当騒がれた事件らしいけれど、あまり記憶がありませんでした。　最近騒がれている「モンスター・ペアレンツ」。少し過剰じゃないかという意見もありますが、いやあ、これはひどい事件でした。ほんとにモンスター。化け物です。ホラー小説より怖いです。　小学校４年生の担任、川上（仮名）氏は、ある日校長から呼び出しを受けます。クラスの問題児、浅川祐二（仮名）の母親がクレームをつけてきたというのです。　その母親は冷静に能面のような顔で淡々と息子が川村からイジメを受けていると報告します。その発端となったのは浅川家がアメリカ人の血を引くことを話した家庭訪問での会話だというのです。外国人に対する差別意識をもった教師が、教室の中で連日「ミッキーマウス」だの「ピノキオ」だのという名前の「刑」を受けているというのです。　浅川の母親は、その刑のせいで息子は耳がちぎれそうになって化膿し、鼻血を出し、教師に対する恐怖のあまりＰＴＳＤになった、と裁判に持ち込みます。　川上氏は、校長の「指導」に基づいて、いったんは体罰を認めてしまいました。　何が怖いって、平然と嘘を述べる人間ほどたちが悪いものはありません。　こちらが理論的に攻めても、相手は本当のことを言わないのですから、話は平行線です。それを堂々とやられると、つい弱気になってしまう。そこに付け入るわけです。　嘘つきは絶対本当のことを言わないのです。「あなたは嘘つきではありませんね？」と質問すると「はい」と答えるのです。　この悪魔のような保護者に目をつけられたのが自分でなくてよかった。読みながら何度も自分がかつて経験したさまざまなできごとを思い浮かべました。もし、そのときの相手がこの親のような人間だったら、自分は何度訴えられたかしれません。　この事件はまだ審議中で（福岡市を相手取った裁判のみ）、今後この保護者がどういうことを語るのか、筆者は報告を続けていきたいと述べていました。　川上先生のような真面目でノーガードの温厚な先生は数多くいます。私が見た現場では世間で言われているような悪徳教師はほとんど存在しません。　川上先生の味方が当初少なかったというのが、一番寂しいですね。　一体福岡ってどういう街なんだ？そんなことも思ってしまいました。

2007年09月08日

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台風だあ

　数年ぶりの泊まりの仕事に出かけただんなは、またもや台風の直撃を受けました。今夜は戻ってくるみたいです。　まだ上陸前ですが、暴風警報のため息子たちも午後は下校してきました。　明日も警報が出ていたら、休校だそうです。　パー君のバイト先から「様子見て、無理だったらいいよ」と電話がありました。　ペー君はこの雨の中行くのか？果たしてバスは運行するでしょうか。　ばーちゃんに今日は病院は見送ろうと電話すると、雨戸が閉まらないのがあると言っていた。　だんなにメールしておいたから、いいっかあ。　

2007年09月06日

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志水辰夫『行きずりの街』

　私立高校の教師と生徒の恋は、正当な手続きを踏んで結婚に至ったにもかかわらず、学園のスキャンダルとして教師を追放し、学長まで自殺するという大事件に発展してしまった。　それから１２年の年が過ぎ、塾講師となった波多野は、そこでの教え子・ゆかりを探して再び上京する。そこにはかつて妻であり、守り抜くことができなかった雅子がいた。　わ～、久しぶりに読んだ純愛ハードボイルドです。主人公波多野氏が頭は切れるし、おそらくかっこよいし、数々の危機的状況をくぐりぬけて、アンダーグラウンドのプロたちをやっつけてしまい、おまけに元の奥さんは聡明で美人で、結局みんなうまくいく（ネタばれ）という、ほとんど韓国ドラマ的な展開です。　書かれたのはバブルの絶頂期、１９９０年の出版ですから、こんなおはなしもアリだったのかな。あれ、今リバイバルみたいですね。図書館の予約も次々と入っているようです。　全編を流れるのは、エレジーですね。男の哀愁というものでしょうか。　雅子さんも昔流行った女性といいますか、もちろんお肌はすべすべでスタイルもよく、頭はいいのだけれど感情豊かで、思わず抱きしめてやりたくなるという、演じるとしたらチェ・ジュしか思い浮かばない女性です。　ハードな部分よりこの二人の純愛物語にけっこう浸りましたねえ。　自分にもあったであろう昔のことなんか思い出したりして。。。。だいぶ脚色してるけど。　はじめて「冬のソナタ」にはまる人の気持ちが分かったような。でも、それだけだな。

2007年09月03日

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