宮部みゆき『楽園』
やっと読み終わりました。今日は一日何してたんだ?という日でした。 ルポライター前畑滋子のもとを訪れたのは、昨年交通事故で少年を亡くした中年の婦人でした。少年は絵の才能に恵まれていましたが、それとは別の特別な絵を描いていたのでした。その中に家の下で眠る少女の絵がありました。それは実の親が娘を殺して自宅に埋めていた事件と酷似しているのでした。 前編は絵を描いた少年や母親のの生い立ちを細かく描いていたため、なかなか話が進みません。後編になっても事件の家族については妹とその元夫とのことは描かれますが、それほど事件につながりません。やっと死んだ姉(茜)が当時どんな様子だったかと、絵を描いた少年が通っていたボランティア組織のつながりが明かされ、挿入されていた「断章」の小学生の女の子が見た怪しい家での事件との関連が出てきます。 そしてこれから、というときになぜか前畑滋子の「手紙」として事件は描かれ、一番のクライマックスはすでに終わっているという展開です。 宮部さん自身が、この前畑滋子のように「模倣犯」のあまりに残酷で特異な事件の疲れをひきずっていて、もう事件当時のことは正面から描くことができなかったのかと思われました。 何より、宮部作品にたびたび登場する「超能力」の存在を途中から全面肯定してしまうというのが、引いてしまうんですね。ここまで丁寧に少年や事件の家族のことを描いているのだから、一見超能力に見えた事柄を科学的に解明してくれる、と期待したいただけにねえ。 そういう意味でアンバランスな作品といえると思います。