東野圭吾『さまよう刃』
さまよう刃 かつて、「読んでから観るか、観てから読むか」というキャッチコピーがありましたが、これは観てから読みました。 映画と多少違っているところはありましたが、あれはあれでよくできていたと思います。 一人娘が乱暴された挙句に殺されます。その父親が、犯人の少年たちに復讐しようとします。少年たちに運び屋にされていた少年の密告によって、アパートを訪れた父親は、そこで娘が乱暴されている場面を映したビデオを発見し、逆上し犯人の一人の少年を殺害します。それから逃亡した主犯の男に復讐するために、彼は長野のペンションを探し続けます。 捜査をする刑事は、自分たちがしていることは、殺人犯である少年を助けることではないかと悩みます。現行の少年法についての疑問をストレートにぶつけた問題作といえるでしょう。 東野さんは、あんまり文章がうまいとはいえないので、それがかえって残虐な状況を直接的に味わうことから逃れられるのですね。ドラマ化するのに最適な条件で書けていると思いました。 それでも、テーマとなっている「悪事を働いても少しの反省もない少年への罰」については考えさせられます。目の前にいたら「殺してしまえ」というだろうなあ。 いったいこのような少年はどうやって生産されるのでしょう。家庭が貧困で親の子育て能力が無いだけではなさそうです。もともとそういった素質をもった人間は存在すると考えたほうがいいようです。 今もこうした事件の犠牲になっている人がどこかにいることを忘れないでいたいです。