諸田玲子『紅の袖』
ある人が読んでいるのを見て、借りてきました。 諸田さんは初めてでして、ふだんあまり時代物を読むことがなかったので他とどうかと聞かれると答えに窮するのですが、まあまあというところでしょうか。 幕末、黒船の襲来に備えてお台場に大筒を備える役目を仰せつかった川越藩のお側役の物語です。江戸に遅れて参じた妻の沙代は砂の多さに閉口しています。雇った女中、みおは、きびきびとよく働くのですが、ときどきぞっとするような眼差しを向けることがあります。夫の親友彦三郎もひとつ屋根の下で暮らすことになり、沙代は彦三郎のおおらかな人柄に惹かれていく自分を意識し始めます。そんな沙代と彦三郎の秘密を女中のみおにつかまれてしまいます。 猫のようにしなやかで攻撃的でそれでも憎みきれないみおの存在がいいです。不幸な境遇でありながら自分の力で精一杯生きようとするみおを、怖ろしいと思いながらも憎みきれないでいる沙代がかわいらしいですね。 諸田さんは静岡県出身だそうで、これから暇なときに少しでも読んでみようかと思います。