川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』
すべて真夜中の恋人たち 川上さんの長編恋愛小説、話題になってますね。 フリーの校閲の仕事をしている冬子は一人で暮らしています。かかってくる電話といえば仕事の付き合いの聖ぐらいです。ただ毎日ゲラをすみずみまで点検して眠るだけの日々。そんな冬子がひとりの男性と巡り会います。 だんだん自分が内気で人との接触を避ける冬子になってしまうようです。難しい言葉もほとんどなく、「暗い」はずの冬子に同化しそうになるのは、誰しも彼女の「傷つきたくない」心理を持ち合わせているからでしょうか。 ああ、「漢字の閉じ開き」ってのが分からなかったですね。へええ、ひらがなにするか漢字にするかってことなんだって。そういえば、ひらがな表記が多いなと思いましたね。これは作者の語感によるものでしょうけど、校閲ってそういうこともやるのですねえ。 三束という男性が何者なのか、冬子とどうなるのか、じれったいくらいですが、どんどん進んで欲しいとは思わないのよね。恋ってこういう風に相手のことをいないときに思うときが一番楽しいんでしたっけね。もうほとんど忘れている感覚ですが。 聖が何か絡んでくるかと陳腐なことを考えましたが、ラストはあれでいいのかもしれません。でも、この先冬子は心配だなあ。こうした人たちがどんどん増えてしまったら、ますます日本の少子化は進んでしまうなと思ってしまいました。 ストーリー展開はほとんどないのに、空気感とかだけでこれだけ読ませる川上さんはやはりタダモノではないですね。