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カテゴリ:読書記録

悪と仮面のルール

 中村文則さんが「今年はこれを書いたからもう次は書かない」と言ったそうです。

 それだけの渾身の作と期待大で読んだので、ちょっと予想と違ってました。

 邪の家系に生まれた少年が、愛する少女のために父親を殺します。やがて成人した少年は顔を整形し、別の男として生活し、彼女を守る存在として生きていきます。


 邪の家系とか凶悪グループとかいろいろ出てくるのですが、彼らが起こす事件がみみっちいというか、あまりスケールが大きくなのですね。本当はもっといろんなことをやっているのかもしれませんが、すべて語りの中のことです。

 首相に郷ひろみのものまねをさせるという要求は漫画の「ザ・ワールド・イズ・マイン」と似ていますし、「JL」の犯人たちが「模倣犯」の模倣みたいな印象もぬぐえません。全体的に漫画の「ハンター・ハンター」のキルアの家より恐くない。

 もちろん漫画では描けない描写は鋭いものがたくさんあります。でも構成としては漫画を超えられなかったのではないかと思います。次兄が出てきたと思ったらすぐいなくなってしまうところなど、拍子抜けする展開でした。


 おそらく中村さんはとてもイイ人なのですね。悪の立場の人を主体的には描けないのではないでしょうか。『すり』のときのように触れてはならない怖ろしい存在としてぼかしておいたほうがよかったかなあ。


 


 






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最終更新日  2010年08月18日 19時54分28秒
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