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カテゴリ:読書記録
【送料無料選択可!】ある補充兵の戦い (岩波現代文庫) (文庫) / 大岡 昇平 著 Zさんが買ってそのままになっていた本です。 俘虜記も挫折したままの私でしたが、これは読めました。 召集されてフィリピンに向かい、捕虜となって帰還するまでを書いた回顧録ということになるのかな。それにしても、理性的です。常に死と向かい合わせにある状況であるとは思えないほどの淡々とした文章です。 戦争体験というと我々戦争を知らない世代には銃撃戦に明け暮れるのかと思いますが、ここで語られることの「辛さ」のほとんどは、愚かな上官の下で行動せねばならなかったことや、そもそも勝てるはずもない装備と作戦に従わなくてはならない「徒労」に向けられます。 もっとも辛い拷問は地獄の「石積み」だという話があります。人は目的がないことをやり続けることができないのです。 大岡氏のような頭脳明晰な知識人なら尚いっそうその「無駄なことをさせられることへの苦痛」は大きかったに違いありません。 しかしながら、この本には、泣き言や感情表現はほとんどありません。まるでビデオで撮ったかのようなありのままの描写です。よくここまで記憶しているなと感心します。 解説に「対象(兵士としての自分)との距離を正確にとりながら、当時の自分の心理や感情の起伏を言葉で明晰に表現しようとする。まるで自分の心理分析を楽しむように言葉のメスで対象を切っていく。」とありますが、まさにその通りです。 文章は平易なのですが、格調高いです。ああ、昭和の作家はこうだったと改めて思いました。大岡氏だからこそできる技といえるかもしれませんが。 ライトノベルばかり読んでいないで、知的好奇心をくすぐるものも読んでいかなくてはと思いました。 それにしても、図書館と公民館とレビュー本が一度に重なってしまいました。ああ、今日は母の日だったってことも忘れてました。天気もいいのになあ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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