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カテゴリ:読書記録
【送料無料】かたちだけの愛 平野さんの作品を読むのは初めてです。芥川賞をとったのがもう12年前ですか。むずかしいという印象で、敬遠していました。 今回はかなり庶民的というか、恋愛がテーマなので読みやすいかもと注文しました。 美脚の女王と言われていた女優(タレント)の叶世久美子が事故で片足を切断した。彼女の義足のデザインを依頼されたプロダクトデザイナーの相良(あいら)は、悲しみのどん底にいる久美子を励まし、健常者が羨ましがるほどの脚を作ってやると約束する。二人の間には次第に愛が芽生えるが、彼女にはイベント会社を経営する胡散臭い男、三笠竜司がつきまとっている。 アメリカの障害者アスリートであり、トップモデルとして活躍するエイミー・マリンズの動画を見て、モデルとして再出発することを決意する久美子だったが、またしても三笠の暴挙が。。。。 叶世久美子という絶世の美女という設定だからでしょうか、いまいちヒロインに同情できないところがたくさんあります。胡散臭い三笠の関係を切ろうとしないのもわけありの女性ならではでして、そんな女性でも男は美しさに惹かれてしまうのですねえ、なんて冷めた目で見てしまうのでした。 二人の愛の行方というよりは、優しさと愛情の違いを追及する物語というべきでしょうか。哲学的な男性はこんなにめんどうなことを考えるものなのでしょうかと思うことが多かったです。 ただ、「健常者が脚を切ってでもつけたくなるほどの義足」という考えはこれまでの障害者への視点を大きく変える発想です。 平野氏はこのたびの地震についても、同様な発想で復興を目ざすべきだと考えているようです。同情とか支援とかではなく、傷ついたからこそ普通の人が得られないものを手に入れるべきだということです。 障害者に対する偏見は昔に比べたらずいぶん減りましたが、それでもまた見下していたのだなあと改めて感じさせられました。 義足の描写がいまいちぴんと来なかったのが残念です。久美子さんの女性らしい感想を織り交ぜるとか子どものような純粋な存在にその美しさを語らせるとか、何か方法はなかったのかしらん。 この作品は「ドーン」と「決壊」とで3部作になるらしいです。ちょっと消化不良気味という感想が多かったようです。どちらも読んでいない自分にはコメントできないのですが、平野氏を身近にしたという意味では成功といえるのかもしれませんね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年05月18日 22時19分43秒
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