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カテゴリ:読書記録

遮光 (新潮文庫) (文庫) / 中村文則

 自らが「特別な思い入れのある小説」とする中村氏デビュー2作目の作品。野間文芸新人賞受賞作。

 事故で亡くなった恋人の死を受け入れられず、その遺体から小指を持ち帰り小瓶に入れて持ち歩く青年。「私」という一人称を用いながら、虚言で固められた会話と行動を常に傍観して描いています。

 デビュー作「銃」と同じように、ある特殊なものを持ち歩くという設定は、周囲のものとの明らかな乖離を印象付けます。

 「普通の家庭だった」と語る青年の過去は当然「普通」ではなく、両親を事故で亡くし、白いワゴンに乗った里親に引き取られますが、その家庭も長くは続かなかったようです。


 心の空洞を埋めることなく生きてきた青年のやるせなさが重くのしかかります。


 彼のように自らの陰の部分に正面から向き合う作家が大衆に受け入れられにくいのは、多くがそういう陰の部分を持ちえていないからなのか、それとも向き合うことが怖いのか。彼の作品を読むとそんなことを考えます。

 中村くんがこれからどうやってその陰の部分から抜け出していくのか。これからも見守っていきたいです。新作「王国」も早く読んでみたいです。

 





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最終更新日  2011年10月22日 08時42分02秒
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