空はとんび

　Sunny 1 【通常版】 (IKKI COMIX) (コミックス) / 松本大洋/著

　「もはや、漫画ではない」というコメントがありましたが、全く同感です。漫画という概念を打ち破る、そうですね、「景画」とでも言ったらいいのかしら。もう少しいい命名ができたらいいのですけど、絵をうっとりと眺めて情景に浸れる作品です。


　関西（おそらく大阪）の児童養護施設にある日一人の少年がやってきます。園長先生はほとんど寝ていて、個人経営で成り立っているような施設です。そこにいる子供らのひとりひとりに焦点を当てて、彼らの世界を描きます。


　松本大洋氏自身が施設にいたことがあり、その回顧録といってもいいでしょう。実在の人物をいろいろ混ぜながら人物を設定したそうです。インタビューで、「今までは整理できなかった、もう少し経つと、美化してしまいそうだから、書くなら今しかないと思った」と述べておられます。


　まだ一巻ですのでお話はまだまだ続きます。ホワイトも純平ももちろん静（せい）も、そしてまきおさんとか園長先生とか全部の登場人物のことをもっと見てみたいです。




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　ついでに図書館で「GOGOモンスター」も借りてきました。こちらは２０００年に出たやつです。「鉄コン筋クリート」の後ですね。小学校が舞台ですが、「あちら側」にすむモンスターたちを描かないことでかえって怖ろしさが増します。観念的です。名セリフがあちこちにあって後を引きますねえ。


　「SUNNY」のほうは（まだこれから描くのかもしれませんが）、そういった観念的なコマはありません。なんだか分けがわからないという今までの作品とは領域が違うというか、そこを抜けたのでしょうね。

　江戸時代浮世絵はそれほど高価なものではなくて、品物の包み紙として使われて、それが輸出品に交じっていて海外で「アート」としての評価を得たといいます。この「SUNNY」はアートでしょう。ああ、生きててよかった。