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カテゴリ:読書記録
高野和明『ジェノサイド』 図書館の予約数が200近かったので買ってしまいました。うん、これは損はないです。 極秘任務を告げられた米軍兵と日本の若き薬学者が、アメリカ大統領と対峙するというスケールの大きな展開です。遺伝子変異、新薬開発とかコンゴの紛争とか難しいことだらけなのですが、それを素人にも分かるように丁寧に説明してくれて、何より最後までハラハラドキドキが続くアクションドラマで飽きさせません。 直木賞は逃したものの、日本でこれだけスケールの大きな作品が作られたことは快挙といっていいでしょう。ちなみに直木賞選考委員たちは「人間の内面が描かれていない」ことが落とす要因だったそうです。要は、直木賞向けではなかったというだけで、小説として面白いのだからそれでいいですよね。 少しネタばれになりますが、人間にはとうていできないと思うことができてしまう「人類」が出現することはありえない話ではないと思えてきました。 3次元の文法を持つ会話のくだり、なんとか解明できないかと何度も読みましたが、まさか私のような凡庸な頭でできるはずがありません。カオスと呼んでいたものにも何らかの法則があるというのも納得がいきます。昔魔術だと信じられていたことが科学的に証明できることはいくらでもありますから。 願わくば「卓越した道徳性」を持つ次世代の人類にこの地球を救ってほしいと思えてなりませんでした。 いやあしかし、細部にも伏線を幾重にも張り巡らして楽しませてくれました。これがたった19万部しか売れていないなんてもったいない話です。文庫化されたらもっともっと売れてほしいです。 高野さんは「13階段」ですごいなと思ったのに、続く作品が今ひとつで残念だなあと思っていた作家さんです。アメリカにも行ってらしたそうで、どうりで日本人を見る目が冷めているというか、とくにミックを悪者のまま終わらせたところが日本人離れしているなと思いました。 コンゴの少年兵の話は本当なのでしょうか。シリアに拷問専門の監獄があるってのも?ああ、世界はこんなに怖ろしいのかと、そういう点でもためになりました。 まあ、あの人類学者でしたっけ、あれが大金持ちだったからどうにかなったってところは甘かったかもしれませんが、そんなのちょっとしたことです。 久々の星5つです! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年11月12日 22時16分26秒
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