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カテゴリ:読書記録
【送料無料】困ってるひと ブランチで何度も宣伝していたのであまり期待はしていなかったのですが、これはよかったです。 膠原病の一種と思われる難病にかかった大学院生更紗ちゃん。ビルマ(ミャンマーとはあえて言わないそうです)の難民支援活動をしてきたばりばりの活動家の生活が一転します。 更紗ちゃんがエライのは、こうした悲惨な状況をすこぶる客観的に、ユーモア満載で描けることです。何より感心したのは、人物や状況をイメージ化する手法です。故郷福島の田舎を「ムーミン谷」と名付け、辿りついた病院を「オアシス」と呼びます。主治医のそれぞれに特徴をとらえたネーミングをすることで読者が混乱することなく読み進めることができます。 それにしてもお尻にできた腫れ物が破れて穴が空いた状態を、「有袋類女子」と銘打つとは!もはや乙女の恥じらいをもつ余裕もない事態であるのに、このセンスのすばらしさ。 医療難民が陥る「制度のマリアナ海溝」や引っ越しをしようとするだけでベッドの上が書類の山になってしまう今の行政のあり方にも鋭いツッコミを入れ続けています。 ムーミン谷では「優等生」だったというけれど、ほんとにこれほどの人材はいないのではなかと思わせる文才と処理能力です。ああ、一日でも早く社会復帰してその能力を発揮してほしいと願わざるをえません。 頼りにしていた友人たちにも見限られ、親たちへの負担は増大するばかり。八方ふさがりの更紗ちゃんが「生きたい」と思えたのは、「あるひと」の存在です。もちろん、まだまだご苦労は続くのでしょうが、明るい展望が見えて、ああ、よかったねえ、更紗ちゃん、と頭を撫でてあげたい気持ちになりました。 これは図書館で借りたのですが、もし少しでも支援になるのなら、きちんと本屋さんで買って読まなくてはと思いました。えっと、続編が出たら今度はちゃんと買います。はい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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