ウクライナの栄光は滅びず
自由も然り
【反転総攻撃が開始された】
『見よ、わたしはすぐに来る。わたしは、報いを携えて来て、それぞれの行いに応じて報いる。』ヨハネの黙示録21.22-22.12
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ブログ短編小説
『ブラックボックス作戦・ザポリージャ』2
この物語は、ウクライナ外国人義勇兵の「俺」が主人公である。
俺たち分隊12人は3日間の偵察任務を終え、無事に中隊司令部ザポリージャ基地に戻った。
夜だったが、英国人中隊長が迎えに出ていた。
「分隊長。皆無事で何よりだ。食事を終えたら、作戦室に来てくれ」中隊長は俺の報告を待っていたようだ。俺はピンときた――本格的な反転攻勢が近いと。
「中隊長。30分後、作戦室に行きます」俺が答えると、中隊長は親指を立てた。👍good!
俺は基地地下にある作戦室に入った。10畳間ほどの作戦室に、10人の将官がいた。おっ! 彼らは、キーウから来た総司令部本部の面々だった。俺の勘は、外れたのだ。ピンどころじゃない。
「分隊長。挨拶は良いから私の横に座ってくれ」中隊長が隣の椅子を指さした。
俺が席に着くと、中隊長が言った。
「分隊長。実は偵察の事でなく、君が注文した物について説明してくれ。総司令部が知りたいそうだ」
俺が総司令部の彼らに眼をやった。神妙な面持ちで俺の口が開くのを待っているようだ。因みに、俺が依頼した物は総司令部は知らない。中隊長が英国の民間会社に作らせたからだ。その予算は、中隊長が外国人義勇兵本部に捻出させた。
俺は注文の物とその目的を簡潔に述べた。
「説明します。あの1000個のバルーンと薄い鉄板製50cmの立方体、つまり箱は敵ロシア軍を騙す物です。中身は30cm位の金属板30枚が入っています」
総司令部の女性将官が訊いた。
「私たちは分隊長のアドバイスを求めに来たのです」意外な話だった。
「俺にアドバイス?」
「そうですよ。あの1000個の物を、何処で、何時、空に飛ばすんです?」
再び俺の脳裏が活性化してきた。そうこなくちゃ。
「俺はこう考えます――総司令部参謀本部が反転攻撃作戦にGO!を出す、その6時間前にバフムート上空、ドンバス上空に上げます」と言うと、男のいかつい将官が手を挙げた。俺は話を止めた。
「分隊長。君の戦術の意図は、我々も読めている。やはり6時間前だね。それも穏やかな夜空にだ。敵のミサイル・攻撃ドローンの消耗を目的としてるし、それらの発射地点を捕捉できる。6時間たっぷりと敵に撃たせておいてからだね、反転攻撃に出るのは? 分隊長」
「ええ、その通りです」俺は説明するまでもないので、短く答えた。
今度は女性の将官が訊いた。
「分隊長。塹壕戦について、どう思います」
俺は思いのほどを率直に言った。
「敵ロシア軍は、ゾンビの大群です。まともな塹壕戦を避けたい。総司令部の作戦本部もそれを承知していますね。簡潔に述べます――武装機械化部隊で塹壕を一気に潰して突破です。あたかもブルドーザーの如く。地雷原も武装ブルドーザーを並列に並べ、土ごと敵の塹壕を埋めていきます。進軍路の確保をします。敵の龍の歯と地雷も同じ方法で突破します。この進軍は2方面で行います。前線の敵を孤立化させて進軍します。市街戦も避けます。敵を孤立化させれば良いのです。まっしぐらに敵の占領地本拠と到達目標地点に進軍し、殲滅させます。取り残された敵ロシア軍は、その後に掃討します。味方の消耗は避けられませんが。兎にも角にも、怒涛の進軍です。そう総司令部もお考えでしょう」
作戦室内が静まった。20個の眼が俺の方に向けていた。その数分後、いかつい将軍が皆に告げた。
「dayデイにあやかり、Mayメイ大作戦の攻撃開始は、5月5日としたい。5日後だ。これは総司令部の決定だ。分隊長。大いに参考になった。感謝する」
俺は彼の話の内容に驚かなかった。が、俺を呼び言わせたことが、少しだけ「?」が付いていた。俺の表情で察した中隊長が言った。
「総司令部が分隊長に聞きたい理由は、これまでの激しい戦闘でも、分隊に死傷者が出ていないからだ」
いかつい将官が、中隊長の言葉を継いだ。
「分隊長。君のアイディアと勇気、そして死傷者ゼロに、我々は、我が総司令部は敬意を持ってやって来た。分隊長。君のことに関し、逐次、中隊長から報告が入っていた。そのたびに我々は学んでいたんだ。ああそうそう、報告の末尾にいつも、〝私は分隊長と馬が合う”、そう書いてあってね。私たちも分隊長と馬が合うようだ。ところであの物体に、如何なる名を冠したら良いのかな? 分隊長」
俺はそれを待っていた。
「あの物体を使う作戦名は、【ブラックボックス作戦】と――」そうブラックボックスであるべきだから。
(つづく)
*この【ブラックボックス作戦】を書いた数日後、私は本当に【ブラックボックス作戦】がウクライナ軍に存在したのを知った。その内容は異なるが……