ウクライナの栄光は滅びず
自由も然り
【反転総攻撃が開始された】
栄光あれ!
『命の木に対する権利を与えられ、門を通って都に入れるように、自分の衣を洗い清める者は幸いである。犬のような者、魔術を使う者、みだらなことをする者、すべて偽りを好み、また行う者は都の外にいる。』
ヨハネの黙示録22.14
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ブログ短編小説『ザポリージャの森』5
この一連のブログ短編小説の主人公は「俺」である。
「俺」はウクライナ外国人義勇軍に志願し、現在、その分隊長の任にあたっている。だが「俺」は、国籍も年齢も、さらには如何なる想いで外国人義勇兵になったかを明らかにしていない。想像できることではあろうが……。
(ロシア軍占拠下のザポリージャ原発区域内)
俺の中隊が「偽旗作戦」で、ザポリージャ原発区域内に入った。原発区域を占領し、南の唯一のゲートの検問を行っているロシア軍は、いかにも精鋭部隊兵士らしくきびきびと動いていた。とは言え、ウクライナ軍の反転攻勢が開始されている最中なので、ロシア軍増援部隊の3個連隊、約3000人とその車両群の配置差配は混乱を極めていた。
メリトポリの占領ロシア軍司令部が、兎にも角にも、増援部隊を送り込んだからだ。これまでもそうだったが、ロシア軍の指示命令系統はモスクワの政治命令に即応している。決して組織的軍事系統のそれではない。
「ザポリージャ原発を政治的かつ軍事に利用する」
「ウクライナ軍の攻勢に対し、ザポリージャ原発の爆破による放射能漏れで対抗する場合もある」
「クレムリンの指示を待て! いずれにせよ、ウクライナ軍から防御せよ! 油断するな!」
「それまでモスクワの命令を待て!」
以上の内容をクレムリンと国防省は、ザポリージャ原発守備に動員した兵士部隊に送っていた。モスクワの独裁者たちは、手段を選ばない常套手法の性癖の持ち主である。無法者、ならず者なのだ。そして極度の臆病者なのだ。
もしザポリージャ原発が攻撃され放射能漏れが起きれば、福島第一原発放射能漏れの数十倍、いや数百倍が想定されている。その放射能汚染は、偏西風にのりザポリージャ州、ドネツク州、さらには東部のロシア領に及ぶものとなる。それでもクレムリンはザポリージャ原発破壊をやるのか? 可能性がある、と想定すべきだ。ゼロではないのだ。
そこで外国人義勇軍の我が中隊に命じられたのは、「ザポリージャ原発奪還」だった――
ザポリージャ原発守備区域に入っている増援部隊に潜り込んだ俺たち偽装中隊は、ごった返している増援部隊に紛れ込むことに成功した。6時間かかって、偽旗中隊は原子炉6基の中間広場に車列を並べた。俺たち偽旗中隊は、可能な限り車内に留まり、夜を待った。
敵ロシア軍の占拠下にあるザポリージャ原発区域内は、一見、広大かつ平穏な公園のようだった。しかもロシア軍の警戒は、原発区域外に向けられていた。ロシア軍のロケットランチャー、戦車砲、自走砲も原発区域外の西の彼方に向けられている。増援を含めた人員の過半は、ウクライナ軍の侵入に備え、原発エリアの境界線に配置されている。幸いなことに、我々の中隊は原子炉守備隊の一部となったことである。俺たちは、車内でまんじりとせず、ひたすら陽が沈むのを待っていた。俺は特別製の弩弓を操作していたが。弩弓の矢は50cmと短い。矢の薄い金属製の羽は、発射時に矢本体の3か所から1cm飛び出す。標準器は赤外線付きで、ロックオンできる。矢は3本でなく、カセットに10本入っている。射程距離は50mと短い。この特製弩弓は6つ。俺に分隊員が持っている。つまり、6カ所の原子炉屋上で迎撃武器と共に待機している敵ロシア兵4、5人を無力化するために使われるのだ。俺は分隊員を2人づつ分けている。
何事もなく、8時間が経った。何事もなく? 正しくは、小事があった――小便のことである。俺たちは、事前にオムツを履いていたので、出るに任せた。
中隊長から俺たちに指示がインカムに入った。
「サーより。これから総司令部は、ザポリージャ原発の南10km以南に砲撃とミサイル、ドローンを大量集中させる。ドローンでのジャミング(電波妨害)も行う。つまり、敵ロシア軍の原発守備隊をメリトポリの司令部から孤立させる。あと30分後だ。ジャミングは3時間。各自の使命を果たす時が来た。皆に栄光あれ!」
「愛馬。了解」俺はそう応え、まだロシア製装甲輸送車内で待機している分隊員全員に命じた。
「対放射能装備を背負え! 手筈通りに動け! 6つの原子炉屋上殲滅攻撃小隊、準備は?」
「了解。準備OK!」6人の分隊員が応えた。
「原発内殲滅小隊。出動だ!」中隊長がインカムで命じた。
「OK!」
中隊は、原子炉屋上突撃隊と原子炉屋内突撃隊に分かれている。
俺たち中隊のインカム電波、中隊長と総司令部を繋ぐ電波は、味方のジャミングに耐えられるようになっている。詳しくは書けないが……最先端技術でなく、アナログ手動方式だと言える。
「GO! GO! GO! GO! GO! GO!」中隊長から命令が出た。ザポリージャ原発には原子炉が6基ある。GOで原子炉一基。1~6号基を占拠している敵ロシア軍に対し、俺たちの中隊は各6名の小隊となり殲滅作戦を実行するのだ。俺の小隊は3号基である。対放射能に改良した装甲車両には、数人が残り、何時でも動かせるように待機している。ロシア語に堪能なウクライナ兵と通信兵も含めてのことだ。もちろん、原子炉内外にいる敵ロシア兵殲滅部隊にも、1名のロシア語ができるウクライナ兵がいる。
小さいが「Z」のワッペンを、俺たちはヘルメットの前後に張り付けている。これが敵味方識別の唯一の印だ。敵ロシア兵に無くて、俺たちだけにある印だ。合図用の両手とインカムを除けば……。
(つづく)
*いつものことだが、ブログ短編小説は書下ろしである。誤字脱字、てにをは、文脈などに乱れがあるようだ。ご容赦のほど。