CO2排出権 海外取得最大3億トン、産業界のコストは5000億円
日経新聞によれば、産業界が京都議定書の温暖化ガス削減目標の達成に向けて海外から取得するCO2の排出量が2012年度までの5年間で合計2億~3億トン規模に達することが分かったという。取得費は5000億円を上回る見通しであるという。新日本製鉄も、産業界全体の排出権購入量を2億2000万トン、取得費用を最低5000億円以上と試算し、同社は約1100万トンの排出権を取得する契約を結び、費用は、年間設備投資額の約1割に当たる250億円程度とみられるという。すでに高水準の省エネ設備を持つ企業は排出権購入に頼らざるを得ず、最終的な購入量は3億トン近くに積み上がる可能性があるという。これは日本の鉄鋼業界が2006年度に排出したCO2量の1.5倍に相当し、産業界や家庭が12年度までに削減する必要がある量のほぼ3分の2にあたるという。先にCO2削減率が高い企業や業界程、これ以上の削減が制限されるため、排出権をよけいに購入しなければならず、不利になるという議論が進んでいるようであるが、後進国などの排出権を購入するためには、後進国のCO2排出量が十分に多くなければならず、後進国から排出権を購入し続けるためには、常に、新しい排出削減技術を開発し持っていなければならず、現時点でのCO2削減率が高いということは、今後の排出権購入のためには有利なことになる。地球全体としての、2050年度までの50%CO2排出削減目標は、既成の事実となろうとしており、排出権購入するためには、後進国に現時点での省エネ技術等を売り込む必要があるわけであるから、それはそれで、商売がなりたつことになるのではないだろうか。重要なことは、長期的な目標に立って、省エネCO2削減技術を高度化してゆく努力をしつづけることであり、それに経費がかかるからと言って、努力をやめれば、地球全体としての環境問題を解決することが出来ず、各国だけの努力が無意味になることを意味している。このような状況に鑑み、環境税や排出権取引を上手くデザインし、先進国が後進国より、常に、技術的優位に自ら改良できるような枠組みを用意する必要があるのであろう。