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この本は「幸運の25セント硬貨」の血を分けた兄弟です。親本が「Everything's Eventual : 14 Dark Tales」で、二分冊にされた兄に当たるのが本書です。兄が後になったのは、ただ単に手に取ったのが後だったからです。
内容は6つの中短編です。「幸運の25セント硬貨」でも感じたのですが、キングの短編集は本歌取りが多い! 本歌取り自体は悪いことではないのですが、本家より面白くないものが多くて。 それでは、ネタばれにならない程度に各短編の感想を。 第四解剖室…下ネタ! 黒いスーツの男…これは、ちょっといい。たいていの人は、子供の頃にこういう経験をしています。 ...いますよね? いますよ、絶対。忘れてるだけで。 愛するものはぜんぶさらいとられる…落としどころがわからない。思いつきで書いた? ジャック・ハミルトンの死…客観的に見ると、どうってことはないのかもしれませんが、個人的には一番好きです。「痩せゆく男」で、キングの描くこの手の男性キャラクターにやられてしまいまして、それ以来、この手のキャラクターには無条件に感情移入してしまうんです。 お話については、結局人にとっては、金だの名誉だのなんかより、自分を本当に理解してくれる相手といる時間が、墓場まで持っていく一番大切なものなんだということを強く感じさせてくれる、いいお話です。 死の部屋にて…無理。 エルーリアの修道女<暗黒の塔>外伝…なかなかに面白い。この人は人外のものを描写させると、本当にうまいです。そういえば、暗黒の塔シリーズも途中で買うのをやめているなあ...買ってみようかな。 この短編集の中でいちばん面白かったのは、序文のキングのセリフです。この短編集は成功したのですが、キング自身は、売れ行きなどどうでもよかったと言っているんです。キング自身が本当に知りたかったのは、この中のお話を読んで、読んでいる人がどんな風に背筋を凍らせられたか、あるいは思わず後ろを振り返ったりしたかということだと。 これを聞くと、キングは本当に物語ることが好きなのだという事がわかります。 キングのワードプロセッサーに向けて話を創りあげている視線の先には、夜中に一人きりでこの本を読んでいるあなたの姿があるということです。キングは、常にそのあなたに向けてメッセージを送っているんです。 「どう? 怖いだろ? ねえ、大丈夫? もっと怖くなるからね」 キングの作品が面白いのは、作品に向けるエネルギーが、お金のために書く作家がつぎ込むものの数千倍だからです。そんなことが出来るのは、キングが自分の紡ぐお話を、真剣な目をして聞いてくれるあなたが大好きだからです。だからこそ、お話のいくつかが「???」というものであっても、ファンはキングの次の作品を心待ちにすることが出来るんです。愛してくれるものを憎むのは難しいですから。 もちろん、こんなことばが負け惜しみに聞こえないのは、キングが大成功しているからです。いやみに聞こえないのは、キングの人柄によるものです。 キングの作品は、ただ怖がらせるだけのものではありません。騙されたと思って読んでみてください。 お勧めは、「痩せゆく男」、「死のロング・ウォーク(ちょっと前に話題になったバトル・ロワイヤルの元ネタです)」 、「スタンド・バイ・ミー」などがとっつきやすいでしょう。 他にもたくさん面白いものがあるので、キングはまた取り上げて行きます。面白いんですよ、ほんと。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 26, 2005 01:31:04 PM
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