「どもり」は、その原因を思われるような気質的異常が認められないのです。すなわち気質や声帯を医学的に検査をしても、レントゲン透視によっても何の異常もないのに、言葉を発する時発声器官がけいれん状態になるのです。医学では痙攣性調節神経説、連合性失語症などとむずかしい多数の学説が合って一致しないのですが、私が行ったどもり矯正の経験によると、これも強迫観念による発語恐怖症でしょうと思います。
原因
なぜ発語恐怖症になったのか、その原因はさまざまでしょうが、精神的感動をきたすべき誘引があって発現するものでしょう。すなわち、幼児に受けた精神的ショック、または厳格すぎる躾が災いすることがあります。あるいは友達にどもる者があって、それをまねした為に、あるいはテレビやラジオでどもる演芸をたびたび見たり聞いて、そのマネをしたため本格的のどもりになるものもあります。あるいは遺伝によるものもあるらしいです。
症状
どもりの症状はその種類がはなはだ多く、普通人は言葉を発する時息を吐きつつ発音しますが、どもりによっては息を吸うときに発音しようとする癖があり、あるいは息が出てしまってから発音使用として声が出ない為に苦しむことになります。そして
「自分はどもりである、どもると人に笑われる」
という羞恥心があるため、しゃべる時緊張する為ますますどもり、あるいは咽喉がけいれんを起こして、全然声が出なくなったり、またはのどで笛を吹くような声が出ることもあります。どもりは前述のように声帯が悪いのでもなく、気管が悪いのでもないのに、本人は「どもる」と思うからどもる、「事実どもるからどもると思う」という悪循環になってますますどもるのです。それを見ていても気の毒になるほどであって、本人にとっては悲しいことでありましょう。
どもりは、たいてい5歳ぐらいで発現するのが多く、小学生の1%がどもりになる状態で、大人になってから発現するのはまれであると言われております。
治療
どもりは催眠術によって、一回~数回の施術で完全に矯正することができます。それにはまず「自分はどもる」という観念を捨てること、これが最も大切な条件です。また、言葉によって発音のむずかしい言葉があるという観念も捨てること。たとえば、カ行が言いにくいとか、サ行が苦手だとか、そうした強迫観念を除かせること、どもると思うからどもるという悪循環によるものであるから、決して心配しないこと、そうすればすらすらと発音できること、などをよく言い聞かせてから催眠術による矯正を行います。