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カテゴリ:催眠療法
斜 傾 症
[原因] 斜傾症とは、首の軸が左または右に傾き、またはねじれる病気で、首だけでなく、中には背骨も傾斜し、首から背骨までを一緒に眺めるとS字のように曲がる病気で、これは先天性、けいれん性、リンパ性などに区別されていまして、首の軸や背骨が傾斜して行くが、しかも痛みは少しも感じない。なぜこんなになるのか、まだ医学的にはっきりした原因はわからない難病です。 斜傾症治療の実例 神戸市 杉浦淑子さん 高校生 20歳 [症状] この患者は、首の軸と背骨とが、いつの間にか幾分曲がっているのに気付いて、大阪の有名な病院で見てもらったところ、斜傾性叙頸病と診断され、首も背骨も次第に曲がっていく悪性の疾患だと聞かされ、驚いて入院しました。入院はしたのですが、病院では治療の方法がないといって、毎日アリナミンを6粒服用させただけで、何の手当も受けず、そのまま長い間の入院中に、首が左の肩にくっついてしまい、背骨は首の軸とは反対にくの字形に曲がって、それが次第にひどくなっていくばかりでした。 付き添いの母親も、わが子の首の軸や背骨が日に月に曲がっていくのを見て、気が気でなく、主治医の先生に、 「こんなに曲がってしまいますが、なんとか手当をしていただけませんでしょうか。わたしも見るに見かねております。先生、どうぞお願いします。お助けください」 と、ときどき嘆願しましたが、その都度、 「そのうち何とか考えますから、しばらく様子を見ましょう。この病気は原因がはっきり分からないのですから・・・」 と、いつも曖昧な、無責任な返事を聞くだけでした。 主治医先生の許しを受けて鍼灸の先生を頼んで、一日おきに治療を受け半年ほどたっても何の効果がなく、首も背骨も次第に曲がるばかりで、家族の人々も、ただうろうろとして悲しみ嘆く日がつづくだけでした。 ある日、この病院に入院中の奈良県から来ている患者が、この斜傾病のことを聞いて、付添人の母親に、 「わたしは、ずっと以前に、お宅のお嬢様とは違う病気で、それは難病でしたが、東京の催眠術の先生の治療を受け一回でなおりましたから、催眠術ならなおるでしょうと思います。あまり気の毒ですから、余計なおせっかいですが・・・、お手紙を出して問い合わせになってはいかがですか」 と、すすめられて母親から私(長尾)に申し出があったのです。私はすぐに治療の場所と日を決めて返事をしました。 母親は、病院の主治医先生の許可を得て、娘を連れて上京されました。私が会ってみると、驚いたことに彼女の首は左の肩にくっついて、首が重いため左手で首を支えているのです。そして背骨は首とは反対の方向へ曲がりつつ、途中で緩やかに折れ曲がって、下へ反対のほうへ曲がっているらしいのです。(服の上から見た感じです。私は患者には決して一指も触れませんから) 大阪の病院から駅まで車で、駅から東京まで新幹線で、東京駅からまた車でここまで来たのは、実に大変な苦労だった由です。 母親から病状を詳しく聞いて私は、 「瞬間催眠法によって、一回の施術で完全になおしてあげますから、安心してください」 と、はっきり告げました。すると彼女は曲がったからだを恐る恐る母親に抱かれて、私の机の前の椅子にかけました。彼女に向かって、 「首をまっすぐに起こしてみてください」 といったところ、それは重くって、そして恐ろしくって、とても起こすことができないということでした。 「では、さっそく催眠術をかけましょう。私が、はいッ・・・と合図をしますと、その瞬間に催眠術画がかかりますから、私がするようにまねをしてくださいよ。合図をしますよ・・・はいッ」 「これで催眠術がかかったのです。私がするように、首を上へまっすぐにしてください。そうです、そのとおりです。痛くも何ともないでしょう。次に首を右に傾けて、右に曲げて、こんどは前へ、後へ、次にぐるぐると、ゆるやかに廻してください」 「はい、それでよろしい、次は、首をまっすぐに立ててください」 「この次は背骨をなおしましょう。せむしのようになっている背骨が、まっすぐに伸びますよ・・・はい、からだをうんと伸ばしてください。それ、そのとおりのびたでしょう」 「その次は、腰に両手をあてて、上体を前へ曲げて・・・後へ曲げて、そのとおりです。次は左へ曲げて、右へ曲げて、はいよろしい、次は上体を左へねじて、右へねじて・・・」 「こんどは私が号令をかけませんから、やってみてください」 彼女は首もからだも、いまやったように運動しましたが、何の故障もありませんでした。 「これで、すっかりなおりましたから、もう再発するようなことはありませんよ」 と、催眠術を解いて治療を終わったとき、母親が、 「この子は背が曲がっていたため、寝るのが大変で、長いあいだ安眠することができませんでした。寝ることも訓練してみせてくださいませ」 と頼まれました。 「じゃ、そこに寝転んでください。まず仰向けに・・・はいよろしい、次はうつぶせに寝てください・・・よろしい、次は左の横腹を下にして、その次はひとつ転んで右の横腹を下にして・・・次はまっすぐに立って、次はすわって・・・これで寝るのもすわるのも何の差し支えもありませんよ」 と寝る訓練も終わりました。彼女は、 「お母さん、わたしはこれでなおったのねえ、首はこんなに自由に動いて楽になったわ・・・背中もみてくださいね」 母親は娘のからだを、服の上から背骨をなでてみてて喜びながら、 「背骨もなおりましたよ」 と、うれしさに母娘は相抱いて、大きな声を出してないてしまいました。私はこのふたりが、嬉し泣きに泣く姿を見て、熱い涙が込み上げてくるのを覚えました。 ふたりは、再び新幹線で大阪に帰り、翌日長い間お世話になった病院を辞して、神戸の自宅へ帰ったと、便りがありました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.06.06 18:10:52
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