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2019.10.23
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カテゴリ:映画


 まいったね、久しぶりに衝撃を受けた映画である。

 いや、こんだけ観終わった後に尾を引く作品となると、自分の人生においても『そう』はない様な気がする。

 視聴を終えてそろそろ一週間が経つが、いまだ気が付くと、この映画の『物語』について考え込んでいるのだ。

 あの辺の描写は、あーいうことなんだろうなぁ…とか
 いや、ちょっと待てよ、もしかしてアレもあーなんじゃね?…とか
 しかしあのラストシーン程の絶望感と、妙な、ほのかな、胸の締め付けられるような『希望』は、ないんじゃね?…とか

 『希望をもたらす神の導き』がヒトにとって現実的な……あくまで淡々とした事態の推移(逃れられぬ絶望感)の中にこそ存在するという、もうその描写だけでこの映画は存在意義があるのかもしれない。


 “ANIARA アニアーラ”~スウェーデン製『宇宙』SF映画の話である。




 以降、ネタバレを気にしないで好きに書いていきますので、少しでも興味を持った方は、ブラウザを閉じてくださいな。
 やはり先入観なしで観た方が、映画は面白いので。







 この物語のターニングポイント(転)は、明らかに『槍』と『十字架』

             

 それまでは『ただの火星移民船の遭難事故(デブリとの衝突)』だったのが、突然事故そのものが特殊な意味を持ち始めるのだ。

 ただ槍はともかく十字架はサラッと出てくるので、持ち主が欧米人というのもあり、あまりにナチュラルに見えてしまうので、初見で特別に関連付けして解釈するのは難しいけれど、それでも槍とほぼ同時にあからさまに描かれているので、まぁ間違いあるまいよ。
 アニアーラのクルー(おそらくは人類代表)に止めを刺す『あの槍』の物語的な意味の無さ(敢えて言うならクルーに希望と更なる絶望をもたらすだけ)こそが、まさに神の啓示であり、あの偉大なる伝説との符合なのだ。

 そして気が遠くなるほどの時を経て、おそらくは一度死滅した人類…というか知的生命体は新天地で復活する(エンディングから察するに多少、姿形は変わっているかもしれないけど)

 え? 何故あのクライマックスの描写で、知的生命体が復活すると言い切れるのかって?
 ただの『生命』かもしれないじゃん?


 いえいえ、『神』は他者に認識されてこそ『神』足りえるんですよw


 そもそもあの『地球そっくりの惑星』には、既に何かしらの生命体はいるっぽいじゃないですか?
 そこにわざわざ遭難したアニアーラが598万1407年後(!)に辿り着くのですから……

 アニアーラそのものがモノリス的な衝撃を原住民に与えるのかもしれないし、アニアーラに存在する生命体の情報(遺伝子やら何やら)が新たに芽吹くのかもしれないし……

 ホラ、書いていると何やら希望溢れるオハナシみえるでしょ?w

 しかしその実、登場人物たち個々人の思いは平気で押しつぶしてしまったままの展開に過ぎないんですな。

 どーでもいいんですよ、神様は、愛とか平和とか、好きとか嫌いとか、嬉しいとか悲しいとか、我に光をとか、そーいうのは。

   

 罪があるとすれば、人類が文明を維持できずに、滅ぼしてしまったことにあると。
 地球に住めなくなってアニアーラみたいな移民船で火星に逃げ出した段階で、人類は詰んでしまったのかもな(神にも見捨てられたと)


 何故、人類は文明を維持できなかったのか?
 何故、滅んでしまったのか?


 何故、598万1407年間、船内で滅ぶことなく無事に宇宙を航海できなかったのか?

 いや、無理だろ、どー考えても。

 んで、それが絶望。


 しかし滅んだ(死んだ)後、自分たちの『次』が『どこかに残るらしい』(この映画の観客視点)

 これが、希望。



 まったくもって「諸行無常」であることよ……


             

 劇中で石棺と揶揄されていたアニアーラ号、やはりアーク(聖櫃+方舟のダブルミーニング)なんだろうねぇ…
 槍といい、実にありふれたキーワードなんだが、真摯に描くとここまで映像に吸引力が産まれるって事なのか。



 最後に蛇足ながら、

 キャッチコピーの“2001年”より、むしろ“イデオン”に近いんじゃね?
 あくまでどっちかといえば、だがw
 絶望の果ての、どーでもいい希望って図式がね……





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Last updated  2019.10.23 05:16:17
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