『V字回復の経営 2年で会社を変えられますか』
【著者】三枝匡 【発行日/発行所】2001年9月 日本経済新聞社【価格】1,680円(税込) 第1章 見せかけの再建 第2章 組織の中で何が起きているか 第3章 改革の糸口となるコンセプトを探す 第4章 組織全体を貫くストーリーをどう組み立てるか 第5章 熱き心で皆を巻き込む 第6章 愚直かつ執拗に実行する東京の大手町に本社を構える、東証一部上場企業『太陽産業』。 かつては積極的な経営で世間の注目を浴び、今でもその社名は知れわたっている。しかし近年は成長が停滞。事業部のなかでわずかな黒字を保っていたアスター事業部も、ついに赤字に転落。会社は未曾有の経営危機に陥ってしまう。そんな状況下にあっても、社内の危機感は薄く、組織の政治性が 優先される“妥協”重視の風土が醸成されていた。赤字の痛みを感じることもなく、内向きの話ばかりに終始し、改革者へ後ろから弾を撃ち込もうとする抵抗勢力。このままいけば、この会社は行き詰まる・・・。社長の香川は、アスター事業部再建のために、黒岩莞太という男を呼びだした。 「いざとなったら、事業撤退もやむを得ない」そう語る経営トップの香川の言葉に、黒岩も覚悟を決める。「2年以内に黒字にできなければ、自分も退任する」黒岩は自ら退路を断ち、数人のメンバーとともに改革に乗りだす。 『あなたはもはや野党でいられない』【レビュー】 さまざまな不振事業の再建を手がけてきたコンサルタントである三枝匡氏が、「ビジネス人生の総決算のつもりで書いた」渾身の一冊。氏が過去にかかわった日本企業5社での事業改革を題材に、ストーリー仕立てで描かれている経営書である。主人公の黒岩莞太は、会社のなかで不振が続くアスター事業部の再建を任される。2年という限られた時間軸のなかで、社内の抵抗と闘いながら、改革を成功に導いていく姿がリアルに描写されている。物語が進んでいくなかで、黒岩を始めとする改革メンバーは、さまざまな困難に直面する。不振事業を抱える日本企業の多くに蔓延している、“組織を硬直化させる病巣”が、いたるところに巣食っていたのだ。その“症状”は、ストーリーの進行とともに、逐一示されていく。また、ストーリーのそれぞれの局面で、“改革を成功させるための要諦”がまとめられている。チェンジリーダーにとっては、非常に参考になるであろう。組織カルチャー改革のためのテキストであり、読み物としても楽しめる本書は、すべての経営者やサラリーマンにおすすめである。《評価》 総合評価 ★★★★★ 内容充実度 ★★★★★ 実用性 ★★★★☆ 読み返し度 ★★★★★