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ふと気づいたのだけれど、自分のプロフィールの好きな映画欄に登録している
映画のことを一つも書いていないなあ、ということで、今日は、 ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の「トト・ザ・ヒーロー」について。 まだミニシアターが今ほど流行っていなかった頃、ハリウッドもの 一辺倒の大映画館に背を向け、良質なヨーロッパ映画を求めて 良く日比谷シャンテに通っていた。そんな折、今からちょうど十年前に 出会ったのがこの「トト・ザ・ヒーロー」という一本の映画。 今以上に多感な青春期をすごす自分にとって、まるで夕闇に彩られた浪漫と 人生を淡々と描くヨーロッパ映画は、彼らの文化への強い憧れを生んだ。 それが退廃的な、前進のない古典回顧であったとしても、自分の血に決して 同化することのない香りを堪能するのは甘美な体験だったのだ。 ベルギー人のジャコ・ヴァン・ドルマル監督は、この作品でカンヌで 高い評価を受け、その後、「八日目」でさらに世に知られるが、 近況は知らない。 映画は、トトという老人が一人の男を殺すために銃を持って、彼の屋敷へ 忍び寄るシーンから始まる。幸福な少年時代の回想から、ショッキングな 事件と青春期を経て、殺意に至る経緯がパズルのように断片的に描かれていく。 幻想絵巻ともミュージカルとも言うべきシーンがいくつも交錯し、 シニカルで乾いた喜劇的演出に、純粋すぎる主人公の人生が心にしみる。 作品は様々な物語や映画のオマージュがちりばめられているらしいのだが、 それらを決して知ることなくとも、巧妙な迷宮的な味わいに酔うことができる。 クライマックスのカタストロフィは、絶望と希望に満ち、生きる力を再認識 させてくれる。 ほとばしる情熱をストレートに感じる秀作。 その後、僕は、ベルギーを訪れ、かの作品を生み出した芸術と美食の街の魅力を 堪能するが、こちらも二度目のヨーロッパ旅行先として、個人的にオススメします。 【オススメ度】★★★★★(5段階) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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